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Inclusion
前世でマキュマズ。

ひたすらうす暗ーい感じで。 






許せなかった。
……許せなかった、自分が。
部下一人ろくに守れなかった、自分が。
ぎり、と唇を噛むと、かすかに鉄の臭いが鼻の奥に広がる。
だが、そんなものでは贖罪にさえならない。

「……まあ、少し落ち着いたら?」

目の前の彼女は、そっと乳白色のカップを差し出してくれた。

「落ち着いてはいるわよ」

ただ、自分が許せないだけだと言えば、向こうは困ったように笑みをこぼす。
指令室にいる時は、刃物も敵わないほどの鋭さをもつマーキュリー。
彼女がこんな顔をするなんて、恐らく戦士以外は誰も知らないだろう。

「そういうのを、落ち着いてないっていうんじゃない?」
「だから……!部下が傷ついたのよ?誰が、冷静でいられるっていうの?」

マーキュリーにあたるのは間違っている。
そんなことは、マーズにも分かっている。
それでも、誰かに吐露しなければ気が済みそうにない。
いや、吐露したところで気が済むわけでもないのだが。

「……私に、力があればいいのに」
「あなた一人で、全てを守り抜くなんて無理なことよ」
「できないなんて、決めつけないで」

苛立ちに任せて棘を吐く。
マーキュリーの慰めさえも、慰めにはなってくれそうにない。
分かっている。
全てを守ろうなどということが、無謀なことだということも。
それでも、それでも許せない。
部下を傷つけられるたびに、失うたびに、マーズはこうしてマーキュリーの部屋を訪れる。

「マーズ」

ゆったりと、カップを持っていた手がマーキュリーの両手に包まれた。
その反動で、複雑な模様を成す水面。
触れた手は、思ったよりもずっと冷えていた。

「……無謀と勇敢は別のものよ」
「知って、いるわ」
「知っていても、理解などしていないでしょう?」

諭される子どもの気分だった。
マーキュリーの瞳を見据えれば、まっすぐに返ってくる光。
対峙した後、マーキュリーがすっと緊張を解く。

「あなたは本当に完璧主義ね」

もう何度目になるだろう。
こうして"完璧主義者"と称されるのは。
そうやって背負い続けていれば、いつか潰されてしまうわよ、という説教を聞くのも初めてではない。
そしてそのたびに、マーズはこう言い返す。
放っといて、私の人生だわ、と。

「それが分かっているなら、もっと楽をすればいいのに」
「私の人生だから、よ。楽に生きるも生きないも、私の自由でしょう?」

半ば吐き捨てるような言葉に、マーキュリーは軽いため息をつく。
どこか哀れむようでもあるその態度が、更にマーズの心をささくれ立たせた。

「あなたは自分の人生を生きてるような顔をしているけど」

でも、それはあなたの人生じゃない、という言葉はどこか謎めいている。
マーキュリーの思考の飛躍についていけず、マーズは思わず問い返した。

「……どういうこと?」
「あなたが生きている人生は、戦士として……マーズとして……ひいては火星のプリンセスとしての人生だわ」

そんなことはない、と言いかけてマーズの脳がそれを押しとどめる。
そんなことはない。

……本当に?

「随分と、哲学的なことを言うじゃない」
「でも、間違ってはいないでしょう?」

マーズの手を離し、ふっと立ち上がるマーキュリー。
自然と、マーズが見上げる格好になる。
ねえ?と問いかける彼女の瞳は妙に妖艶だ。
そんなマーキュリーの姿に、今までどれだけ圧倒されてきたことか。
きっと、一度や二度ではない。

「もう一度言うわ。あなたは、あなたの人生を生きなくちゃ」
「……そんな権利、私たちにあるわけ……ない、じゃない」

生まれながらにプリンセスを守るのが役目だと決まっていた。
小さな頃から、それだけを教えられてきた。
今更、戦士以外の自分など。

「さっき、自分の人生だと言い張ったのに?」
「……あなたの言うことは、難しすぎて分からないわ」
「そう、かもね」

今は分からなくてもいいわよ、とマーキュリー。
その言い方はやっぱり子ども扱いをされているようで。

「あなたは、どうしてそう」

いつもいつも、マーズより一歩も二歩も先も進んでいて。
そして、少し遠いところからマーズを眺めている。
手招きするでもなく、手助けするでもなく。
ただ、見ているだけ。
その態度に、マーズは苛立つ。
いや、悲しくなるのだろうか。
自分でもよく分からない。
マーキュリーの言葉は迷路のようで、煩わしかった。
と同時に、心地よくもあった。
きっとそこには、出口もちゃんと用意されているはず、なのだ。

「……簡単なことよ」

言って、マーキュリーが作業机から何かを取り出すのを、マーズは目の端に映す。
彼女の手に握られていたのは、薄暗い部屋の中でも赤く輝く何か。

「……石?」
「地球では、装飾品として使うそうよ」

月でも使うでしょう?と言われ、その石を受け取る。
"ルビー"と呼ばれるその石は、光の加減で様々な表情を見せた。

「その石が……どうかしたの?」
「前に聞いた話だけど……」

そう前置きして、マーキュリーはふわりとマーズの隣に腰掛ける。

「この石は、純粋な鉱石ではないらしいの」
「純粋じゃ、ない?」
「そう……」

何が言いたいのだろうと彼女の横顔を見てみても、表情が読めない。

「こっち、は?」

不意にマーキュリーは、自身がつけていたネックレスをマーズに示す。
深い、透き通った青。
たしか……名前は。

「サファイ、ア?」
「えぇ……そう」

マーキュリーがそのネックレスをはずし、マーズの持っていたルビーに並べる。
青と、赤。対照的なその色彩になぜかどきりとした。

「これらの元は、同じものだそうよ」
「……同じ?」

呟いて、手の中にあるそれらを見つめる。
ルビーとサファイア。
これらが、同じものだというのか。
確かめるようにマーキュリーの方を盗み見ると、今度はかちりと目が合った。
それはしごく柔らかく、マーズの思考を絡め取っていく。

「同じ、なのよ」
「じゃあ、どうして……」

片や紅に輝き、片や藍にマーキュリーの手元を照らしているのだろう。

「不純物が作用するの」
「不純、物?」

口にして、なんて似つかわしくない言葉だろうと思った。
鮮やかな石たちを前に、"不純物"となどというマイナスなイメージは相応しくないような。

「それらがなければ、この石はこんなに綺麗な色を帯びないの」
「そうなの?」
「えぇ……純粋な物になると、色のない結晶になるらしいわ」

不思議な気分で、もう一度自分が持つそれとマーキュリーの握るそれを見比べる。
ふと、マーキュリーがこんな話を始めたきっかけを思った。
そして、いつの間にか消えていたやり場のない苛立ちに気づいた。

「……どうしてこんな話を?」
「え?……さあ、どうしてかしら」

はぐらかすようにゆるりと笑って、マーズは手の中にあるその石を撫でた。
それを煌めかせるのが、不純物だというから不思議なものだ。

「完璧である必要も……全てを背負う必要も……」

ないわ、というマーキュリーの囁きが、耳の奥で溶けていった。
ゆるやかに巻きついてくる腕を受け入れ、彼女の肩に頭を預ける。

「……私は、受け入れるから」
「……何があっても?」

当たり前でしょう、とマーキュリーの指がマーズの髪を撫でる。
そんな甘い言葉を、昔のマーズなら軽蔑を持って聞いただろう。
ただ、今なら……そして、彼女の言葉なら。

きっとまだ、信じていられる。






どうもひるめです。
今日は、世間で言うポッキーの日ですが……ですが。
こんなうす暗いSSを書いている私……あらら。

前世の若干シリアスな雰囲気も結構好きだったりします。
マーズって、抱きしめるとこちらも傷ついてしまうタイプの女性なんじゃないかと。
なんだか、そういう女性に対して美を感じるようです私。

そういえば、マーズの部下=マーキュリーの部下だったりする裏設定があったり。
本編では描ききれませんでしたが……orz
posted by ひるめ | 22:22 | その他(セラムン) | comments(0) | trackbacks(0) |
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