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Morning Moonで会いましょう

どうも、ひるめです。

タイトルはセラムンの曲なのに内容はももゆりです。
うっすら暗い……いやそうでもないですね、たぶん。







耳の奥で、どくどくと心臓が脈打つ音がする。
手ごたえのない霧のような夢から無理やり目覚めると、首の付け根がずきずきしていた。
目を閉じれば、目の奥で炸裂する緋色の閃光。
フラッシュバックする数々のシーン。
先ほどまで見ていたものが、喉元に絡んで息を奪っていく。

「……はぁ……」

寝ざめの悪い朝は、嫌いだった。
特に、目覚めて独りであることを思い知る朝は。
この夢を見るたびに、いやが上にも敗北したあの日を思い出す。
敗北したこと自体を引きずっているのではない。
ただ、あの時。
任された使命を果たせないまま、戦えなくなってしまったことが許せない。
複雑に皺の寄ったシーツの上で、ゆりは一人汗ばむ額を抱えた。
脳内で、自己嫌悪の波が押し寄せる。
ぎり、と歯噛みすると、頭に響く引きつれた発砲スチロールのような音。
やがて、少しだけ落ち着いてきた呼吸と共に、緩慢な動作で枕元の時計を探す。
学校がある日ならともかく、休日に活動を開始するには少しだけ早い。
かといって、二度寝などをするような時間でもない。
少しだけ逡巡した後、ゆりはゆっくりと起き上った。
と、その時、机の上で震える携帯が、ゆりの動きを止める。
こんな朝早くに、と画面を見やれば、映るのは一瞬前に脳裏をよぎった名前。

「……もしもし」
「あ、ゆり?」

電話の向こうから聞こえてくるのは、呑気そうなももかの声。
そう早起きでもない彼女が、こんな時間に起きているとは珍しい。

「どうしたの、こんな時間に」
「ね、外見てみて?」
「……外?」

何だというのだろう、と思いながらゆりはさらりとカーテンを開けた。
下の路地を見てみても、まだ人通りは少ない。
てっきり、ももかが手でも振っているのだろうかと思ってみたが、それらしい人影もない。

「一体……何?」
「空よ、空」

言われて顔を上げれば、うっすらと桃色の染まった空。
そして、その空に鋭い刃物で切りつけたような細い白の亀裂。
淡い空のコントラストが、朝でも夜でもない場所を作りだす。

「あ……」
「ね、ね、綺麗でしょ?」

朝と夜がせめぎあう空間で、それは静かにそこにあった。
どちらに染まることもなく、凛と白い三日月。

「朝起きたら、見つけたのよ」

なんだか嬉しくなっちゃって、と言うももかの声はいつものように弾んでいる。
そして、それを見せたかったというももかの思いにも、どこか胸が熱くなった。

「……素敵ね」
「でしょう?」

夜が去る前の一瞬だけ現れ、恐らく数分も経てば、消えてしまうであろうその儚さ。
普段は気にも留めないはずの光景が、今日は何故だか一段と綺麗だった。

「少しは、元気出た?」
「……え?」

携帯電話を片手にしたまま、ももかの言葉の意外さにゆりは一瞬固まる。

「どうして……?」
「うーん……なんとなく?」

電話の向こうで笑う彼女の声は、全てを見透かしているようで。
ゆりのことなら何だって分かる、と自慢げに言う声が、なんだか可笑しかった。

「ね、やっぱり怖い顔してたでしょう?」

電話に出た時にさ、と言われて、そうかもしれない、とゆりは記憶をたどる。
そんな表情をしていただろうか。
声に出てしまっていただろうか。

「……してた、かも」

出ていたとしても、その変化は僅かだったであろうに。
それだけで、ゆりの心情を察してしまうももか。
ももかの勘の良さは、いつだってゆりのためにばかり鋭くて。
そしていつも、自分はそれに甘えてしまっているのだ、とふと思った。
敵わない、とゆりは肩をすくめる。

「鋭いのね」
「まあね」

あ、というももかの言葉に、何か気を取られるようなことでもあったのだろうか思ってみる。
ダメだ、ももかの思いを察することなどそう容易くはない。
次の瞬間ももかから発せられた言葉も、ゆりの予想とは全く違っていた。

「ね、ちょっとだけ歩かない?」
「え?ももか、今どこに――」

てっきり、彼女の目に映ったものを報告してくれるのだろうと構えていたのに。
間髪入れずに鳴り響いたインターホンに、やられた、と思った。
ゆりが耳元にあてる携帯からも、くぐもったやまびこのようにその音が繰り返される。

「あなたねえ……」

ゆっくりと覗き窓から確認すれば、にこにこと手を振るももかがいた。
その表情は、イタズラを成功させた子どもそのもの。
思えば先ほどから、外にいる時に入る微かなノイズが電話から聞こえていたような。
だが、そこからももかが外にいるのだろうとは思い至らなかった。
恐らく、外にももからしき人影を見つけなかったから。

「たまにはこういうのも良いかなって」

扉を開けてみれば、ピースサインと共にそんなことを言うももか。
外で喋っている時間が長かったせいか、その頬は寒さに赤く染まっていた。
扉を開けた隙間から入ってくる冷気は、ゆりの肌もちりちりと刺激していく。

「寒いわね」
「まあね、冬だし」

その寒さに、ゆりはやっと自分がまだ起きたばかりの格好だったことを思い出した。

「あ……ちょ、ちょっと待ってて」
「うん、待ってる」

行ってらっしゃい、と手をひらひらさせるももかの声を背に、再び自分の部屋へ戻る。
今更ながら、なんて格好で出迎えたんだろう、とわずかな後悔と共に。


外に出てみると、玄関先で味わったものより更に鋭い寒さが二人を襲った。

「やっぱり寒いわね」

隣を行くももかが喋るのに合わせ、息が一瞬白に染まる。
彼女が着る服もまた、白を基調としたもので。
冬は何故だか白が似合う、とぼんやりと思った。
まだ、頭は寝起きの温さを抱えたまま。
ももかが、寒いのにかこつけて腕をからませたのを感じた。

「ゆり?」
「何?」

数分前まで、自分がこんなことになっているなんて思いもしなかった。
少しだけ気分は優れないままの一日を過ごすだろう、と勝手に思っていたのに。
満足げに笑うももかの顔を眺めながら、ゆりはどこか不思議な気分に浸る。
これが夢なら、醒めなければ良いと。

「あれ、満月じゃ似合わないわね」
「え……?」

言われてふと空を見上げると、もうすっかり空は薄青に塗られている。
目を細めて見てみれば、ほとんど沈みかけた月の白さも自己主張していた。
頭の中で、それを丸々とした月に置き換えてみる。
それはやはり、どこか無粋な感じがした。
太陽が昇った後に沈む月は、欠けていると決まっているのだが。
似合う似合わないで判断してしまうももかの感性が、なんだか素敵だと思った。

「欠けた月の方が好きなだけかも」
「そう?」

言いながら、肩にかかる重みにももかの方へ顔を向ける。
今まで、欠けた月など好きになれそうになかったというのに。
ももかの一言でそれが覆りそうになる。
なんて単純な、と思ったけれどそれでも良い。

「少しだけ寂しそうなのよね」
「寂しそう?」

ももかに言わせれば、三日月は寂しそうなのだ、と。
だから好きなのだ、とも。

「なんていうんだろう……抱きしめたくなる、というか」

どきり、と心臓が跳ねる。
ももかが言っているのは月の話だ、と言い聞かせても。
何故か胸の奥がどくどくと鳴っていた。

「ももか――」

別の話を振ろうとしたゆりの試みは、しかし失敗に終わる。
それと言うのも、隣人がまたも意想外の行動に出たせいで。

「ちょ……もも、か」
「……ね、だから三日月の方が好き」

頬をさらう風は冷たい。
足の間をすり抜けていく風も冷たい。
何より、ひやりと触れられた頬が冷たい。
ゆりが歩き続けるのを阻むように、向かい合わせたももかの瞳は、何故か濡れていた。
勝手に、この寒さのせいだろうということにした。
この人が自分のために泣くなどと、そんな自惚れたことは思いたくなかった。

「今日の月は、一段と綺麗ね」

両頬を包むももかの両手を思いながら、視線を向けた空。
しかしそこには、もう月はいなかった。

「……そう、かしら」

いつの間にか沈んでいたのだ、と当たり前のことをしみじみ思った。

「でも、独りで泣いてほしくない」

絞り出されたももかの言葉に、はっと息を呑む。
地平線の向こうで、あの月も泣いているのだろうか。
人知れず、誰にも見えないところで。
ごめんなさいと謝りかけたゆりの瞳には、違うの、と首を振るももかが映る。

「だから……傍に、いさせて?」

独りで泣かなくて良いように。
何かあったら抱きしめられるように。
ももかの言葉に答える代わりに、すっかり冷えた体ごと包みこむ。

「それは、こっちのセリフよ」

夜にとり残された欠けた月。
それを想って泣く彼女。
大丈夫よ、と誰に言うともなくゆりは呟く。
きっと朝が、それを全て包んでくれるはずだ、と。






どうも、ひるめです。
ちょっと前から構想はあったのに、なかなか書き上がらなかった物。
タイトルはSuperS劇場版の曲より。
この曲結構好きだったんですけどねー……曲とSSの中身は全く違うものに←

朝の月は夜の月より綺麗だな、と常々思っていた結果、こんな形になりました。
ゆりさんが自分の痛みとかを口にしなくても、もも姉は感じてるんじゃないかな、と。
そして密かに心配してる、と。
頼らないのはそれなりの理由があるのだろう、と分かっていてもぶつけてほしいもんだと思います。
posted by ひるめ | 15:11 | ももゆり | comments(0) | trackbacks(0) |
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