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拍手を……更新……。
どうも、ひるめです。
結構前から止まっていた拍手をやっとこさ更新……遅筆で申し訳ないです……。

続きから前回のログです。






だん、と派手な音がドアをノックする。
その音に煩わしさを覚えながら、ジュピターは乱暴にドアを開けた。

「何の用だよ、こんな時間に」

き、と返される強い光は、まっすぐにジュピターを見つめる。
そこに宿るのは、激しい非難の色。

「……何をやってるの、アンタ達は」

達、という言葉に、朝のことか、とジュピターは嘆息した。
恐らくセレニティから話を聞いたのだろう、と。
一方、セレニティが泣きついたのがマーズでよかった、とも思った。
これがヴィーナスだったりしたら、と今更ながら背筋が冷える。

「……入れよ」

低い声で迎え入れると、無言でジュピターの部屋に足を踏み入れるマーズ。
お互い、廊下でかわすような内容の会話ではないことは、よく分かっていた。

「……今朝のは、一体何?」

ガチャリ、と扉が閉まった途端、マーズの口から溢れだす批判。

「何って……何を聞いた?」
「喧嘩してたって、二人が」

怯えていたわよ、というマーズに、申し訳ないことをしたな、とジュピターは思う。
だがあの時は、ああでもしなければ感情を抑制できなかったであろうことも確かだった。

「……まあ、少しは」
「少し?それであそこまでプリンセスが怯える?」

特にあなたは、彼女を慰める役でしょう、というマーズの言葉。
そういえば、そんな役割分担もあったな、とふと思い出した。
だから余計に、セレニティは怯えたのかもしれない、とも。

「あいつが……勝手に人の庭に入ったから」
「それは知ってるわよ」
「……マーキュリーは……いくら誘ったって来なかった」
「……それも、知ってる」

話しながら、ジュピターは今朝の自分の感情を客観的に見つめているような気分だった。
なぜあそこで、ああも感情が高ぶってしまったのか。
何がそんな気にさせたのか。

「でも彼女は……マーキュリーとは違うのよ?」

"アミ"をマーキュリーに重ねるなんて、と。
そこに込められているのは、一種の哀れみの様でもあった。
そうだよ、とジュピターは頷き、改めてそこでマーズに視線を向ける。

「分かってる、つもりでいたよ」

本当は分かっていなかったけど、というジュピターに、マーズの瞳に疑問符が浮かぶ。

「つもり、だった?」
「そう……でも、今朝やっと実感したんだ」

あいつは、マーキュリーじゃない。
そう言いきったジュピターの表情を、マーズは不思議なものでも見るような目で見た。

「……な、なんだよ」
「……別、に」

鋭い怒りを向けていたはずのマーズだったが、それがふっと柔らかくなる。
一瞬変化したマーズの空気に、ジュピターはその故を問おうとした。
だが、目を伏せてしまった彼女に、それ以上どう言葉をかけていいのか、よく分からなかった。


おかえり、という言葉は、なんて優しい響きを持っているのだろう。
マーキュリーは、最近になってそれを知った。
そして、今日も。

「あ、おかえり」
「……ただいま」

まことはすぐにマーキュリーの手元にあるそれを見つけた。

「どうしたんだい、それ」

それ、と指さされて、マーキュリーは持っていた小さな紙袋を開く。
中から取り出した深い色合いの石に、まことがわあ、と声をあげた。

「綺麗、だね」
「……えぇ」

思わず手に取ってしまったそれを、そっとまことに手渡す。
それは、マーキュリーの手にあるよりまことの手にある方がずっと似合う、と思った。

「今日、買ったのかい?」
「……まあ」

どうしてだとか、何故だとか。
そういった下手な詮索をまことはしない。
その優しさに安心し、身を任せている自分がいることにふと気付き。
いつの間にか染まってしまったものだ、とマーキュリーは息を吐いた。

「まあ、外出する気になったのはいいことだよ」

ね、と笑い、まことはマーキュリーをソファに座らせる。
自身はその隣に、本当に自然に腰掛けて。
今は散歩するには良い季節だろう、というまことに、マーキュリーは素直に頷いた。

「……春、だった……かしら」
「え?あー、そうだね。」

昔、書物で触れたことがある。
地球という星には、生命が溢れ、移り変わる四季というものが存在するということを。
よく知ってたね、というまことの笑顔が、遠い昔のそれと重なる。
こちらの時間に来てから、そんな風にジュピターの姿がダブって見えたのは初めてだった。
一瞬、虚をつかれたような思いで、マーキュリーはまことの顔を見つめた。
何?というように少しだけ首を傾げる彼女の表情は、だがやはりジュピターのそれとは違うのだ。
手の中に返された青い石は、昔のそれとは違うはずなのに。
彼女からそれを贈られた日は、ずっと前のことであるはずなのに。
今になってフラッシュバックするなんて、とマーキュリーの顔に浮かぶ自嘲の笑み。

「……何でも、ないわ」

話してもいいかもしれない、とふと思った。
目を休めるため、机の上に置かれたメガネを手に取り、マーキュリーは改めてまことの姿を眺める。

「聞いてくれる?」
「……何を?」

マーキュリーの想像より、まことの仕草は落ち着いていた。
ある種、マーキュリーの言葉を待っていたようでもあり。
そういった点で聡いところは、前世の彼女に少しだけ似ていた。

「あたし、で良いのかな?」
「えぇ」

かちゃり、とメガネを押し上げ、マーキュリーは口を開く。

「これ、ね」

この石、と指さしてまことの方を窺ってみれば、うん、と頷く優しい笑顔。

「今まで生きてきて、一つだけ……後悔、してる」

手の中にある、確かな硬さを持つその石を。
マーキュリーは一度として忘れたことなどなかった。
それを彼女が差し出した時のことも、それを突っぱねたマーキュリーに向けた寂しげな瞳も。
数時間ほど前、レイにした話を繰り返す。
自分の中にずっと収めておくつもりだったはずだったのだが。
話し始めると、言葉はまるで水のように流れ落ちていく。

「……形見、なのか」

まことがふと呟いた言葉。
それを聞きながら、不意にマーキュリーは思う。
自分は、覚悟を決めているはず、だったのに。
"形見"という言葉が心に突き刺さる。
話しながら、こうも他人が自分を残して逝くことを恐れていたのだ、と気づいた。

「……私が、勝手に思っていることだわ」

あくまでマーキュリーの言葉は主観的なものであって、ジュピターの真意は分からない。
ただ、それを誰かに分かってほしかった。
ジュピターがそういったつもりではなかったとしても、マーキュリーにはそう感じられたのだ、と。
そう、分かってほしかった。

「そう、じゃないかも」
「え……?」

一瞬、反応が遅れて間抜けな声が漏れる。
まことが何を言っているのか、脳が理解するまでに数秒を要した。

「どういう、こと?」
「いや……形見、じゃないかも、って思って」

ゆるりと崩れた笑顔は、やはりジュピターのそれによく似ていた。
その奥にある光の鋭さは、決して似通ってなどいないのに。
確かに彼女は、ジュピターの生まれ変わりなのだ、と思えた。
彼女なら、ジュピターの転生した姿である彼女なら、もしかしたら。
信じられる、と思った。
何を根拠に、と理性が言うが、本能が反論する。
彼女なら、信じられる、と。

「形見じゃない……?」
「うん、なんていうかさ……約束、かなって」
「約束?」

ゆらりとずれたメガネを指で直し、改めてまことの方に向き直り。
わずかにクリアになった視界で、マーキュリーはその言葉の意味を考える。

「そう。約束だよ……生きて帰るって」
「生き、て」

うん、と力強く頷くまこと。
石を握ったままの手を、まことはそっと包み込む。
生きる、という言葉は、今までその石にマーキュリーが抱いてきたイメージとは全く逆で。
どうしようもなく、心が揺れた。

「一番大切な人に……自分の一部を持ってて欲しいというか」
「適……当、なことを」
「適当じゃない。私がジュピターでも、そうする」

まことが"ジュピター"の名を出したことは、意図的だったのだろうか。
だとしたら、まことの策は非常に効果的だった。
そんなはずはない、という思いと。
いや、実はそうだったのだ、という思いと。

「もう一度、それを返してもらうために、帰ってくるんだよ」

ね、と笑いかけられたが、マーキュリーにはまことの表情が全く捉えられない。
そこで、初めて自分の頬に伝う温度に気づいた。
自分の瞳を濡らす、その水滴に気づいた。


「ジュピターは?」
「……何を聞きたいの?」

分かっているでしょう、とでも言いたげなヴィーナスの瞳。
その態度から、セレニティはヴィーナスにも同じことを話してしまったのだと推測できた。

「あら。あのアミに誰かさんを重ねて、センチメンタルになってるんじゃないの?」

恐らく、ヴィーナスは比較的早い段階からそれに気づいていたのだろう。
そこで敢えてそれを放っておいたリーダーに、改めてマーズは底の知れない恐怖を覚える。

「残念ね。正確には、"なってる"じゃなくて"なってた"よ」
「え?じゃあ、今は違うとでも言いたいの?」

言われて、マーズは朝のジュピターの様子を思い返す。
あれは何と言えば良いだろうか、昔のジュピターの輝きが戻ってきたかのような。
彼女の体から溢れる生気に、今さらながら驚いた。
そしてそれを復活させたのは、ジュピター自身の力ではなく。
せっせとバラ園に通い、あのジュピターでさえ咲かせられなかったバラを花開かせたアミの存在。

「……今は、違うわね。あれは、アミとマーキュリーをちゃんと区別しているわ」

そして、その上でジュピターはアミに心を傾けている。
それを聞いたヴィーナスの顔に浮かんだのは、驚愕か、それとも。
いずれにせよ、それは事態を快く思うものではなかったはずだ。

「じゃあ、本当に戻ってしまったって言うの?」

昔のジュピターに、とヴィーナスが言うのも無理はなかった。
昔のジュピター、とは、生命を殺めることができないジュピター、ということでもある。
すなわち、本当に戻ってしまったのなら、ジュピターは戦闘で使い物にならない、ということで。
将来を見据えるように瞳を見開いたヴィーナスに、マーズはしっかと頷いた。

「昔……出会ったころの、あの子にそっくり」
「……じゃあ、やっぱりダメね」

あれは、使い物にならないわ、と。
その表情は、過去にヴィーナスが同じ言葉を吐いた時と、何ら変わりのない冷たいもの。
何度見ても、それはマーズの背筋を凍らせた。
だが、マーズは変わった。
どんなにヴィーナスの態度が変わるまいと、マーズの思考は変わった。
だから、当時は恐怖のみしか覚えなかったヴィーナスの言葉にも。
今なら、対抗することができる。

「ダメ?何がダメなの?」
「何がって……結局、戦闘で使えないならダメ、でしょう」
「でも……私はあんなジュピターだってダメだとは思わない」

ジュピターの長所は、戦闘能力の高さなどではなく。
本当の彼女の強さは、どんな絶望の中でも他人を支えられる包容力なのだ。

「マーキュリーだって、ジュピターがいたからあんな風に笑えるようになったのよ」

ヴィーナスの洞察力を持ってすれば、そんなこと分かっているはずだろうに。
マーズにはどうしても、ヴィーナスがそれを理解してくれない理由が分からなかった。

「だから……だから、認めて。ジュピターは、今のままでも十分強いって……!」

言い切ってから、つかの間訪れる沈黙に、マーズは拍動の音の大きさを自覚する。
こんな風にヴィーナスに反論するなど、今までのマーズならあり得ないこと。
だが、今朝のジュピターは、ヴィーナスに作り上げられたマーズの世界を崩すほどの何かを持っていた。
たとえば、何が正義で、何が道徳であるかといったようなものたちが。
ジュピターの言葉一つで、ぐらりと揺れ動いてしまった。
それをヴィーナスにぶつけた時、何が起こるのだろうか。
マーズにとっては恐ろしくもあったが、その先を見てみたい気もしていた。

「……そう。言いたいことは、それだけ?」
「え?……え、えぇ……」

ヴィーナスの呆気ない態度に、一度崩れた世界が不安に震える。
否定するなら、すれば良いのに。
肯定するなら、すれば良いのに。
ヴィーナスが与えたのは、そのどちらでもない。
話は分かったわ、と去ってしまう彼女の背には、無関心、という言葉が相応しかった。

「ちょ、ちょっと待ってよ!ヴィーナス!」
「何?……何か、まだ用?」
「な……何よ、それ」

あまりにも手ごたえのない表情で、ヴィーナスはマーズの言葉を受け流す。
それが腹立たしくて、マーズは叫んだ。

「アンタ何も感じないの?!何か言ったらどうなのよ!」
「何かって……何を、言えば良いのかしら。……あなたがしたいなら、そうすれば?」

今度こそ、なす術がなかった。
言葉に詰まったマーズを置いて、ヴィーナスの姿はどんどんと小さくなっていく。
廊下の向こうにその姿が消えるまで、マーズはその場に立ち尽くしたままだった。


「な……お前ら、何やってんだ?」
「何って……見れば分かるでしょう」

ジュピターは、バラ園の入口で立ち尽くす。
それというのも、いつもは人などいないはずのバラ園に、複数の人影を見つけたから。

「いや、そりゃ……水やり、だろうけどさ」

じょうろを抱えてジュピターに手を振るのは、セレニティ。
そのセレニティを挟むように並ぶのは、亜美、そしてマーズ。
普段はいるはずのない人の姿……特に、マーズの姿にジュピターはまいったな、と頭を掻く。

「……じゃなくて!お前何でこんなところにいるんだよ?」

昨日まで、ジュピターに対し鋭い視線を突きつけていた張本人。
それが、このバラ園にいる、というのはひどく不釣り合いなことのように思えた。
何より、ジュピターにはマーズの思考回路が分からない。

「ジュピター……申し訳ないことを、したわ」
「え?あー……いや、え?」

そして、突如謝罪の言葉まで降ってきて、ジュピターの脳は更に混乱した。

「や、だからさ……なんでそこで謝るんだ?」
「……やっと、私も目が覚めたから」

言いながら亜美と視線を交わし、互いに頷き合う二人。
少し見ない間に変わってしまったらしい二人の関係に、ついていけていないのは自分だけ。
セレニティまでもが、笑顔でそこに加わるものだから、ジュピターはやれやれ、とため息をこぼす。

「うん、まあ……いいんじゃないか、何が起きたか知らないけど」

誰だって、不快な時に笑顔を浮かべるわけはないのだから。
マーズが笑っているのなら、恐らくそれは良いことなのだろう。
久しぶりに流れる穏やかな空気に、ジュピターは頬をほころばせた。


窓の向こうに広がる風景は、いつの間にかすっかり変わっていた。
そのことに、ヴィーナスはずっと前から気づいていた。
時間は過ぎていくもの。
心は移り変わるもの。
それは、四守護神でも、悠久の時が流れる月でも同じ。

「……マーズ」

その名を呼んでみても、返事などあるはずはない。
何故なら、その本人は、窓の向こうに在る光の中で笑っているのだから。

「……マー、ズ……ッ」

彼女をなぞるように指を立てると、ガラスが不快な悲鳴をあげた。
それでも構わずそれを繰り返す。
どうせ、自分の気持ちは落ちるところまで落ちたのだから。
これ以上、不快な事象を加えたところで悪くなりようがない。

「……ぅ……ぁ、ぇぐ……」

喉から溢れるその声を、何とか抑える。
忌々しい、感情。
ふたをして、心の奥底に封印したはずだったのに。
マーズの叫び声に、あえなくそれは崩壊した。
あのマーズが、いつの間にか籠から飛び立つだけの翼を手に入れていたのだ。
否、最初からそれはマーズの中にあった。
周囲が強く光れば光るほど、負けじと輝く翼。
ずっと前から知っていた、そしてマーズにはひた隠しにしてきた翼の存在。
マーズは、ヴィーナスの知らぬ間にそれに気づいて。
そして、ヴィーナスが引き留める間もなく彼女は飛び立っていた。

「ふ……ぁ、は……」

自身の胸元を乱暴に掴み、瞳から落ちそうになるそれをとどめようとする。
自分が選んだ道なのだ、最初から棘だらけだと知っていたはずだ、そう言い聞かせて。
posted by ひるめ | 01:45 | 拍手ログ | comments(0) | trackbacks(0) |
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