カウンタ
web拍手

CALENDAR
S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
<< May 2017 >>
SS書いてみたり。日々のこと描いてみたり。
<< 拍手を……更新……。 | TOP | お知らせ。 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

posted by スポンサードリンク | | - | - | - |
この手のひらで

ひるめです。
今回は、まこレイで一つ。

普段の戦闘ではない負傷、というものをテーマにしたもんで(何故こんなものを受信してしまったのだか……)、"切られる"場面、表現等が出てきます。(といっても大したことはないんですが……)
そういったことにトラウマがある、または気分を害する恐れがある、といった方はご注意ください。







レイは不機嫌だった。
肉体的な疲労と、それを上回る精神的な疲労と。
望んだわけでもないのに何かに巻きこまれるということは、レイにとって大きなストレスだった。
その原因のほとんどは数十分ほど前に起こった事件にあるのだが、それに加えてもう一つ。
それが、現在は風呂に入っているはずの彼女だった。


週末だし、今日あたりうちに来ないか、と言われて断る理由はない。
期末試験等があったせいで、互いに慌ただしい日々が続いている中。
無理に会いたいというのも気がひけていたから、まことからの誘いは素直に嬉しかったのだが。
その日のうちにレイが帰ると言いだした時、彼女はやはりいつものように渋い顔をした。

「レイ、お前な……」

自分が女性であることをよく考えろ、とか。
こんな時間に出歩くなんて、とか。
本当に毎度毎度同じことを言ってよく飽きないな、とレイは冷めた思いでそれを聞いていた。
確かに最初は心配してくれているという嬉しさもあったのだが、こうも説教されては辟易してしまう。
聞いている身にもなってくれ、と言いたくもなる。
ただ、それを言ってしまえば元も子もないことくらい、レイにだって分かる。
だから、聞くだけ聞いて無理やりにでも帰ろうと思っていた。

「……もういいかしら?」
「や、だから……!」

悪いこと言わないから泊っていけ、と彼女はやはり険しい顔を崩さない。
こちらの事情も考えずに押しつけられる善意に、不意に苛立つ。
自分が苛立つのは筋違いだという思いもあったのだが、それ以上にまことの言動が気に障った。

「……もう帰るわよ」
「レイ、話聞いてないだろ」
「私の都合はどうだっていいわけ?」
「そういうんじゃなくてさ……」

ああもう、と苛立たしげに息を吐くまこと。
こういう時にだけまことは頑固なのだ、本当に。
それに加えてレイも簡単に折れる方ではない。
これ以上話していても埒が明かない。
半ば喧嘩別れのような形ではあったが、レイはそうしてまことの家を後にした。
いつもなら、そこからまっすぐ家に帰りつくはずだったのだが。
まことの家から少し離れた所で、それは唐突に起こった。
まことと軽い口喧嘩をしていたせいで、少しいつもの勘も鈍っていたのかもしれない。
音もなく忍びよる人影に、気配を察知した時既に遅し。
鈍く重たい衝撃と、次いで二の腕に走る鋭い痛み。

「ッ……?!」

よろめきながらも捉えた目の端で、認識できたのは光沢の無い黒いパーカーの後ろ姿だけだった。
なんとかよろよろと道端にへたりこむと、背筋を嫌な汗が伝っていく。
ようやく何が起きたか理解たらしい体が、二の腕の痛みを訴え始めた。

「……痛ぅ……」

ぼんやりと光る街灯の下、咄嗟に掴んだ二の腕から染み出た何かが鈍く光を反射した。
"通り魔"――そんな言葉が不意に脳裏をよぎり。
まさか、という思いもあったが、現実の痛みは確かに先ほどの事件を物語っている。
とにかく安全な場所に、行かなければ。
本能にも似た何かがそう訴える。
その一心で思いついたのは、数分前までいたまことの家だった。

ドアを開けた瞬間の彼女は、まさに驚愕、といった様子だった。
先ほど出ていったはずの人間が、のこのこと帰ってきたのだから。
それも、日常生活ではまず負うことのない怪我と共に。
しばらく茫然としていたまことは、急に我に返ったようにレイに改めて向き合う。
夢ではない、ということを再確認するように。
それからは、まことからの説教の嵐。
よくもここまで言葉が矢のように出てくるものだ、とレイは頭の隅で呟く。
普段だって無口な方ではないのだが、こうもしつこいとため息をつきたくもなる。
挙句の果てに警察へ行こう、とまで言い出す彼女をレイは、大したことないわよ、と切り捨てた。
腕の傷はずきりと軋むように痛んだし、普通なら警察に届け出てしかるべき事件であるとも思う。
しかし今は、心を落ち着ける場所が欲しい。
自分が傷つけられた、ということはレイの予想以上に精神的な疲労をもたらしていた。

「レイ、まだ話は――」
「いいから……ちょっと放っといて」

極力まことを刺激しないように、レイは言葉を選んだつもりだったのだが。
背後のまことの気配が膨れ上がり、苛立ちを臭わせる。
だが、これ以上の議論が無駄であることはまことも薄々感じていたことだったらしい。
それ以上、彼女の口から言葉が吐き出されることはなかった。


もう何度も通ったせいで、慣れ切ってしまったまことの部屋の中。
勝手知ったる人の家、とはよく言ったものだ。
一人になりたい時、静かな空間が欲しい時、どこに行けば良いかもなんとなく分かるというもの。
もしかしたら、まことにとってのレイの家もそうなのかもしれない。
そうであってほしい、などというのは勝手な願いだろうか。
まことが手当てしてくれた二の腕をなぞり、改めてため息をもう一つ。
刺激の洪水に晒されているかのようだった頭が、ようやく冷えてくる。
がたん、と遠くで音がして、まことが風呂からあがる音がした。
今なら、冷静な頭で互いに話ができるかもしれない。
そろりと部屋から抜け出し、リビングへと続く廊下を通り抜けると、寒くもないのに背が震えた。

「……?」

半開きのドアから、リビングの様子を窺う。
普段と変わらないそこには、風呂上がりの空気を漂わせ、一人ソファに沈む彼女の背中。
先ほどのような、一方的な怒りは感じない。

「……レイ」

独りごとのようにも聞こえるその言葉。
それを都合よく解釈して、レイはそっとまことの元へ寄る。

「まこと……」

ゆるく波打つ彼女の髪を眺めながら、レイは不意に風呂上がりのまことを見るのは久々だ、と気づいた。
ここ最近は、彼女の家に泊まる暇さえなかったから。
今考えなくてはならないのは、そんなことではないと分かっているのに、くだらないことがぐるぐると頭を回った。
ゆるりと顔をあげたまことは、何も言わずレイの手を引く。
まことの出方を窺っていたレイにとって、それは不意打ち以外の何物でもなく。

「え、わっ……」

次の瞬間には、レイはまことの腕の中に収まっていた。
レイからはまことの顔など見えるはずもなく、唐突な彼女の行動にただ困惑するばかり。

「……どうしたの?」
「……ごめん」

小さな声でこぼされた謝罪が、レイには意外だった。
頑固なまことのことだ、てっきり己の正しさだけは曲げないだろうと思っていたのに。

「なんか……うん、レイに怒ることじゃなかったよ、ね」
「……何、お風呂でのぼせでもしたの?」

風呂に入る前のまこととは全く違う様子に、レイは困惑する。

「違う、よ。あたしさ……結局自分が許せなかっただけなんだなって思ってさ」
「……どうしてまことが自分を責める必要があるの?」
「だって……だってさ、あの時あたしがちゃんと止めてれば、とか……せめて途中まででも送っていけば……って」
「……それは結果論でしかないじゃない」

まことがどんなに強く止めたところで、レイは無理やりに帰ったかもしれない。
彼女が一緒だからといって襲われなかっただろう、なんてことは言えない。

「まこと……?」
「だっ、て……さぁ……」
「ちょっと……何?泣いてるの……?」

ぐ、とレイを抱くまことの腕に、更に力が加わる。

「何よ、なんでまことが泣くのよ……」
「当たり前だろ、大事な人が、傷つけられて……それで……何もできなかった……」

普段なら保護者のように大らかな笑顔を湛える彼女が、今は小さな子どものようで。
道に迷って、親とはぐれてしまった子どものようで。
小刻みに震える声に、レイの心がずきりと軋む。

「……もう、嫌だ……嫌だよ、ぉ、レイ」
「分かった、分かったから……」

ぎゅ、と回された腕の中でなんとか体を反転させ、レイはまことに向き直った。
うつむいた頬を伝う幾筋もの涙を丁寧に指で拭い、動き辛い中でまことの首に腕を回す。

「ごめ、レイ……」
「もう、いいから……ね」

ぐすん、と鼻を鳴らしながら、おずおずと上向けられる顔。
その額に自分の額を合わせ、レイはそっと指通りの良いその髪を撫でる。

「……私も、もう少し気をつけなきゃ、ね」
「……本当、だよ」

ほっとしたように、まことから漏れる笑み。
それをきっかけに、レイの緊張もゆるやかに解けていく。
気づけば、いつもはしないような行動も散々とったような。
それもいい、たまにはこんなこともあったって。

「……やっぱり、こんな遅くに帰ろうとするレイにも問題はあるんだよ?」
「な……何、突然」

膨れた頬が、やけに子どもっぽかったせいか。
真っ赤な目をしたまことを、いつもは見ない角度から眺めていたせいか。
その瞳にくらりときたのはここだけの話。

「今日はもう、帰らないんだろ」

投げかけられた質問に、ちらりと時計を確認する。
さすがに今から帰るなどと言えるほど、レイも無神経ではない。

「……まあ、そうなるかしら」
「そっか……じゃあ」
「え、あ」

ぐるりと回転する視界に、気づけばレイはさっきまでの体勢に戻っていた。
背中越しに感じるまことの気配は、何かを思いついた様子。
そしてこんな時の彼女の思いつきは、往々にしてろくでもなかったりする。

「……何を企んでるのかしら」
「別に……今日はずっとこのままでいようかなって」
「……は?」

振り返らなくとも分かる、今のまことは、いつものあのとらえどころのない笑顔を浮かべているはずで。

「それってどういう――」
「ん、こういうこと」

今度こそ、本当に動きようがなかった。
しばらくじたばたと暴れてみたレイだったが、まことの腕には歯が立つはずもなく。

「……本気?」
「心配させた罰……なんてね」

耳元で囁かれ、これ以上レイが抗う余地はない。
こうなったら、気が済むまで付き合うほかなさそうだ。

「……せめて、お風呂くらいは」
「そうだね……一緒に入る?」
「な……そんなこと――」
「まんざらでもないくせに?」
「……馬鹿」






どうも、ひるめです。
風邪だなんだといっていたらこんなに間が空いてしまいましたorz
ネタは思いつくんですが、形にならないのがもどかしい。
もっとさくっと書けるようになりたいもんです。

たまに子どもっぽくなるまこちゃんもアリだ、と思って書き始めたらこんなことに。
結局何が書きたかったのかぼやけてしまったような気も……反省。
まあこの話もずっと書きかけフォルダに放り投げていたんですが……まこちゃんが泣くとどうにも話が進みませんね。
この場合、レイちゃんがあまり自分からアクションを起こす方じゃないからなんでしょうか。
ちなみに、仮タイトルは「いやいやお前は可愛いよ」でした。なんのこっちゃヽ( ´ー`)ノ

……実際にはこんなことがあったら、まずはすぐに警察に届け出ましょう、本当に。
posted by ひるめ | 00:24 | まこレイ | comments(0) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
posted by スポンサードリンク | 00:24 | - | - | - |
コメント
コメントする










この記事のトラックバックURL
http://hirumeguarana.jugem.jp/trackback/503
トラックバック