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いとし、君

どうも、ひるめです。
ここ数日、もぞもぞと書いていたのがなんとか形になりました。
なんとつぼゆりですってよ奥さん←
つぼゆりは読むことはあっても書くことはないだろうなぁなんて思っていたんですが、DX3を見たらなんだかネタが降ってきました。

本編と後日談の間…スタッフクレジットの辺りの出来事…のつもりなので、ネタバレ注意です。







あれから、どれだけの時間が過ぎただろう。ふとそんなことを思って、つぼみはふと手を止める。
もう新学期が近いというのに、何をするにもやる気がおきない。何故自分がそんな状態なのか、原因は明白だ。春は出会いと別れの季節だというけれど、こんな別れがくるなんて、予想していなかった。きっと、この世の誰も。

「……シプレ……」

その名を呼んでも、今はあの元気な返事が返ってくることはない。ものすごい勢いで胸に飛び込んでくる、あの感覚にはもう二度と出会うことがないのだ。

「ぅ、く……」

ふとそれを思い出すと、胸のどこかが決壊したかのように視界が滲んだ。
シプレたちのことは思い出しても、口に出さないようにしてきた。それが、いつの間にか皆の間にできた暗黙の了解。
しかし口に出せずに蓄積した思いは意外なほど大量で、それは一粒や二粒の涙で収まる気配はなかった。
思わず近くにあったぬいぐるみを抱きしめると、切ないほどの弾力。それがそのまま自分の心のようにも思えて、蘇るのは腕の中にあった温もり。
椅子の上で一人うずくまると、ふさりとしたぬいぐるみの毛並みが肌をくすぐった。
名前を呼んだところで、どうしようもないのに。
シプレたちのことは、信じているから。互いに、見えなくても繋がっているから。だから大丈夫だよ、と言ったはずなのに。
部屋に残る様々なものに、飾ってある花にさえシプレの匂いを感じられる。今まで当たり前だったことが、急に当たり前でなくなってしまうのは、つぼみが思っていた以上につぼみの心をえぐっていった。
窓の外はぽかぽかと暖かいのに、つぼみの部屋だけ季節が来るのが遅れてしまったような。置いていかれてしまった季節を追いかけるように、つぼみはゆらりと立ち上がる。どうせ部屋にいたところで、何をする気になるわけでもないのだ。それならば、部屋の中で腐るよりまだ外に出たほうがマシかもしれない。


久々に出た外の空気はまさに春、といった陽気をまとっていた。それは、少し早足なつぼみには暑いとさえ思えるほど。
だが、実際に外へ出てみても恋しいという感情が変わるわけではなかった。河川敷の公園、初めて出会ったあの道。どこを歩いても、頭上にいたはずのものがいない。
少し質は違うだろうが、失恋もこんな感じなのだろうか、とつぼみはぼんやりと息をつく。
大切なものは、失って初めてその真の価値が分かる、とはよく言ったものだ。自分は、分かっているようで何もわかっていなかったのだ、ということにつぼみは改めて気づく。
そんな風にあてもなく歩いていると、結局最後に行き着くのはあの温室だった。そういえば、あのブラックホールとの一戦以来、ここにも来ていなかったな、とつぼみは思い返す。
変身する能力を失い、そして平和になったこの世界では、つぼみたちの出る幕などないに等しい。そんな状況で、必然的に四人が集うことも減った。何よりこの温室には、シプレやコフレ、ポプリたちとの思い出が一番詰まっている。そのせいで、皆無意識にこの温室を避けているのかもしれなかった。
久々に訪れたそこは、やはりいつものようにむっとした熱気に包まれていた。その中で、つぼみの祖母、薫子がつぼみを認めて反応する。

「あらつぼみ、久しぶりねえ」
「おばあ、ちゃん……!」

ここまで歩いてくる間にも、つぼみの目は十二分に潤い、赤くなってしまったはずなのだが。薫子の顔を見ると、再び感情の波がつぼみの胸に押し寄せてきた。衝動のままに駆け寄り、そのまま薫子に抱きつく。

「どうしたの、つぼみ?」

いつもと変わらない、柔らかな祖母の温もり。それだけで、高まるつぼみの感情が、少しだけ静まっていく。
寂しい、それ以外に言葉が見つからない。
寂しい、寂しい、どうしようもなく。それを完全に埋める術などないと分かっていても。

「みんな……やっぱり最後はここに来るのかしら」

泣きじゃくるつぼみの頭を、さほど大きくはない薫子の手が包む。

「みんな……って、今までにもこんなことが?」
「そうねえ、ゆりちゃんなんて、一時期は毎日のように来ていたかしら」

思いがけないその名に、つぼみはきょとんとしたが、それも一瞬。
その原因に思い当たったとき、つぼみは別の意味で自分の胸が締め付けられるのを感じた。

「……おばあちゃん、それって……」

薫子はつぼみの言葉に対し、静かに頷く。それだけで十分だ、つぼみの想像がゆっくりと確信に変わる。
そう、ゆりの妖精、コロンは――。

「ダークプリキュアたちに敗れてからしばらくは、ふらっと来ては何も言わずにコッペの傍にいたものよ」

いつも気づけばいなくなっていたけど、と付け加え、薫子の目がすっと遠くなる。あのころ、きっとゆりの心は、つぼみの想像など及ばないほど大きな傷ができたはずだ。父の失踪と……そして妖精コロンの消失と。

「妖精が傍にいないって、こんなに辛いんですね……」

でも、とつぼみは思う。
自分たちの場合は、それでも心の準備をする時間があった。ほんの一時だったとはいえ、ちゃんと"さよなら"を言える時間があった。
何よりも、シプレたちはこの空の下、きっとどこかで笑っているはずなのだ。

「こんな苦痛を、ゆりさんは独りで……」

たった独りで、乗り越えたのだ。自分にできるだろうか、自問したところで答えは決まりきっている――無理だ。

「そう……あの時ゆりちゃんがここに来たのは、コッペがいたからかもしれないわね」
「コッペ、様……」

そう言う薫子の声も、心なしか沈んでいるようで、まさか、とつぼみは顔を上げる。そこには、何ともいえないやりきれなさを帯びた表情があるだけ。
はっとした思いである場所に向かうと、そこにはつぼみの部屋と同じようにぽっかりと空いた空間だけが存在している。

「おばあちゃん、コッペ様は……?!」
「シプレちゃんたちと一緒よ。自分の世界に帰っちゃったわ、さよならも言わずに」

言えなかった、という方が正しいかしら、と息をつく薫子の顔を、つぼみは正視できなかった。そうだ、あのコッペ様だって例外ではない。ここにさえ、変わってしまった日常があるなんて。

「そう……私も、誰かを失う覚悟はあるつもりだったけれど……」

でもやっぱりコッペがいないと、辛くて仕方がないのよ、という薫子の言葉に、つぼみは大きく頷く。
そう、辛い。あんなに濃密な日々を共にすごした仲間が、不意に消えてしまうなんて。

「私……私ッ」

ゆりの辛さなど、つぼみが完璧に理解できるものではない。そうだと分かっていても、つぼみは流れ出る涙を止めることができなかった。ゆりを哀れむわけではない。ただ、ゆりを思うとどうしようもなく鼻の奥がツンとした。まるで、思考回路が一つの大きな川になってしまったよう。そしてそれは、つぼみの支配を超えてつぼみの瞳からあふれ出た。

「おばあちゃん……」
「あら、つぼみ、そんな顔しないの。あなたたちが成し遂げたことは、すごいことなんだから」

そっとつぼみの肩を抱き、優しくなだめるようにぽんぽんとたたいて。

「そうそう、お花の水やりも久しぶりに頼んでいいかしら」

少しは気分転換も必要よ、そう薫子は笑い、つぼみの背をそっと押したのだった。


久々に訪れる温室は、しかしコッペがいないこと以外には何か変わった様子もなかった。思えば、小さい頃から何かあるとここにやってきていたような。本能的に、ここが安心できる場所だと知っていたのかもしれない。
そんな温室の奥に別の気配を感じ、つぼみは動きを止めた。他にも誰か、ここにいるのだろうか。恐る恐る、といった様子で足を進めていたつもりだったのだが、つぼみの足元でかさり、という音。あ、と思ったときにはもう遅い。

「誰か、いるの?」

周囲に響く静かな声は、つぼみにとって聞き慣れたものだった。聞き間違えるはずはない、先ほどまで話題の中心にいた、彼女の声。

「ゆり、さん……」
「あら、つぼみ……?」

振り返る彼女の手の中にあるのは、つぼみが持っているそれと同じもの。ということは、薫子はゆりにも水やりを頼んだ、ということなのだろうか。

「あなたも薫子さんに頼まれたの?」」

持っていたそれを少しだけ持ち上げて、偶然ね、なんて。そんなはずはない、それはつぼみの祖母が作り出した、意図的な"偶然"だ。

「あ、あの……ゆりさん、どうして」

ここに、と聞きかけて、それも何だか違うような、とつぼみはその先の言葉を引っ込める。ここに来るのに、理由など必要ない。ただ必要だと思った時に来ればいい、ここはそういう場所だ。

「そういうつぼみはどうしたの?ずいぶんと浮かない顔をしているけど」

言われて、つぼみははっと自分の頬を触る。さっきまで泣いていたのだから当たり前といえば、当たり前の話だが、そんなに分かりやすく表情に出てしまっていただろうか。

「なんでもない、です……!」

慌ててごしごしと目をこすってみる。何より、ゆりの前では泣いてはいけない、そんな気がした。単に会えなくなったというだけで、日々涙に暮れているなど、ゆりのことを思えば甘えも良いところだ。

「そう?なんでもないようには見えないけれど……」

ざり、とゆりが一歩足を踏み出す。ああ駄目だ、今近寄られたら、心の底に足を踏み入れられたら。
――また、泣いてしまう。

「……つぼみ?」

それでもつぼみは、何とか自分を保とうと頭を振る。そんなつぼみを、しかしゆりが放っておいてくれるはずもなく。構わず近づいてくる足音を耳の端で聞きながら、つぼみは勝手に流れ出ようとする涙をせき止めようと必死だった。

「…………」

わずかな沈黙、その後。
不意に降ってきたふわりとした感触に、体が包まれるのが分かった。自分がゆりの腕の中にいる、と気づくのに、つぼみは数秒を要した。

「……ぁ、うぅ……」

背の高い彼女の腕は、つぼみが思っていたよりずっと大きくて、たったそれだけのことにつぼみの瞳は再び潤む。

「なんでもないなら、あなたはどうしてそんな顔をしているの?」

優しすぎるその声に、これ以上我慢などできそうになかった。
ゆりの服が汚れる、とでも何とでも言いようはあったのだろうが、一度抱きしめられてしまえば、どんな言葉も意味を失う。

「ぅ、く……うぁあ……」

押し殺しても、歯の隙間から漏れ出る嗚咽。ゆりは何も言わず、つぼみを抱きしめたまま。とくとくと早鐘のように脈打つつぼみの心臓が静まるのを、待ってくれた。

「……ごめんなさい、私……」
「どうしたの、急に謝ったりなんかして」
「私……私、シプレがいなくなるのが、こんなに苦しいなんて思わなくて」

ゆりの心の傷も、過去の出来事も理解しているつもりだった。だが、結局は理解したつもりになっていただけなのかもしれない。実際、自分の妖精がいなくなる苦しみを本当に理解できたのは、自分もそんな境遇になってからだったのだから。

「ゆりさんは、こんな思いを独りで抱えていたんですよ、ね……」

つぼみの言葉に、ゆりの瞳がわずかに丸くなる。

「そりゃ……昔はそう、だったかしら」
「……今も、ですよね」

どこか寂しげに、細められるゆりの瞳。ずきり、とつぼみの胸が再び音を立てる。

「ゆりさんは、簡単にコロンのことを割り切れるほど」

……強くない。
変身して戦えば、確かにこの四人の中では――恐らくはこの前集った二十一人の中でも――最も強いはずだ。
それでもつぼみには、ゆりが”強い”とは言えそうになかった。

「……それ、は」
「なのに、私は」

何も考えず、ただ泣いているだけだった。

「自分のことしか、見えてなくて」

背中に回された、ゆりの腕がとてつもなく重たく感じた。自分には、ゆりに慰められる資格なんてないのに。

「何も気づけなかった、ゆりさんのことなんて、一つも……」

だから自分は、ゆりに抱きしめられることも、抱きつくこともできないはずなのだ。
落ち着いて、と囁かれた声に、それでもつぼみの気持ちは収まらない。シプレがいなくなった喪失感に加え、自分の未熟さがじりじりと実を焼いた。

「つぼみ……つぼみ!」

半ば乱暴に体を揺すられ、からん、とつぼみの手から零れ落ちるじょうろ。

「……落ち着いて、つぼみ」
「……私」

はっとつぼみが顔を上げた拍子に、がちり、とかち合う視線。その時、ゆりの目の奥に宿っていたのが何という色であったか、つぼみにはよく分からなかった。

「……本当、全然気づけなくて」

駄目ですよね、と自嘲するつぼみに対し、ゆりは何も言わずつぼみの手を引く。どこか座りましょう、と微笑んで。つぼみはそれに素直に従い、温室の隅に二人で並んだ。

「つぼみ……あなたはよく気づく人よ」
「そんなこと……」

ない、と自己嫌悪の波に再び陥りかけたつぼみだったが、それを遮るように強く握られた手に、それを呑みこむ。

「あなたはとても優しい人なのね」
「どうしてそうに思うんですか?」
「そんな風に、他人の痛みにさえ、敏感に気づいてしまう」

するりと、つぼみの手の甲をなぞっていくゆりの細い指。

「そして、他人のために泣けるんだもの……それって、つぼみが優しいから、じゃないかしら」

ね、とゆりが首を傾けると、流れるような髪がさらりと揺れる。

「それに……コロンのことになると、我を忘れてしまうのは私も同じだったわ」
「ゆりさん……」
「でもきっと、それがパートナーというもの、じゃないかしら」
「パートナー……」

どこまでも、懸命に互いのことを考えられる、必死になれる、それがパートナーなのよ、と。ゆりとコロンもそんな関係だったのだろうか。
脳裏に蘇るシプレの声や姿に、不意打ちのようにまた涙がこぼれそうになる。

「……泣きたいときは、泣いてもいいんじゃないかしら」
「でも……」
「泣くことでしか癒せない傷も、たくさんあるはずよ?」

堪えなくても良いのだろうか、本当に?そんなつぼみの心を見透かしたように、ゆりはそっとつぼみの頬を両手で包む。
それが引き金にでもなったかのように、ゆらりとぼやける世界。

「ゆりさ、ぁ……」

何か伝えたいことが確かにあるのに、息がつかえて上手く言葉になってくれない。今はただ、ふんわりとくるまれる感覚に、身を埋めることしかできそうになかった。
小柄なつぼみに合わせ、少しだけ屈められた背中の向こう。風に吹かれた真っ白な花びらが散っていくのが見えた。






どうも、ひるめです。
いかがでしたでしょうか、つぼゆり。私が書くとつぼゆりはこんな感じになるようです。
どうもつぼみは自己評価が低いように思えてならない…ので結構つぼみが内向的になってしまったような…その辺は私の性格とも関係してくるかもしれませんが。

映画を見たときに、皆が妖精との感動の別れをしている中、ゆりさんの心中ばかりが気になって仕方がなかったんですよね…。すでにコロンを失っている彼女は何を考えているのだろう…と。
それをぐずぐずと考えていたら、こんな形になりました…。
posted by ひるめ | 21:57 | その他(プリキュア) | comments(0) | trackbacks(0) |
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