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春の嵐 -1-
どうも、ひるめです。
美奈レイ…のようなそうでないような…。
とりあえず、前編だけです。






耳障り。
少し前まではその一言で切り捨てていた、教室内の喧騒。
そこに少しだけ耳を傾ける余裕が出てきたのは、成長というものなのだろうか。
誰が引っ付いただの、別れただの、よくもまあ毎日同じ話題で盛り上がれるものだ、という感想に変わりはないのだが。
世間では"お嬢様学校"なんて言われているが、休憩時間の彼女たちはそれには程遠い。
その辺にいる女子高生と、何ら変わりない。
少なくとも、おしゃべりであるという点では。


普段通りの授業時間を過ごし、学校で過ごす時間も半分を過ぎた頃。
昼休憩を利用して図書館でゆっくりしようとやってきたレイに、珍しく声をかけてくる者があった。

「火野様、ちょっとよろしいかしら」

振り返った先にいたのは、見覚えのない少女。
この学校の制服を着てここにいるからには、きっとこの学校の生徒なのだろう、と予測はつくのだが。

「……はい?」

彼女の浮かべる笑顔に、微かななまめかしさを覚えてレイは眉をひそめる。
一度見たら忘れそうにない顔なのに、レイには全く覚えがない。
そのことが、妙にレイの心をざわつかせた。

「火野様は、心を寄せておられる殿方などいらっしゃいませんの?」
「は?」

言葉は淑やかだが、言っていることはあまりに通俗的だ。
レイは反応してしまったことを深く後悔した。
しかし、そのまま無視して通り過ぎるわけにもいかず、レイは彼女に向き直る。

「いえ……今のところは、特に」

レイはそれで話を終わらせたつもりだった。
人と話す為に、わざわざ図書館まで足を運んだわけではない。
だが、相手は素っ気ない返答だけでは満足しなかったのか、更にレイを引き止めた。

「今のところは……ということは、今後はそのつもりがあるということですの?」

そんなことを聞いて、一体何になるというのだろう。
くだらない、と切り捨てかけて、レイはその言葉を呑み込んだ。
むやみやたらと人を遠ざけちゃダメよ、と脳内の彼女に人差指を突きつけられたような気がする。
こんなところにまで侵食してきているなんて。

「まあ…そう、なるかしら」

動揺を隠すように言葉を継いだレイに、相手は更に詰め寄り、

「火野様のことですから、殿方への理想もお高いんでしょう?」

押し売りのセールスマン顔負けの勢いと圧迫感。
どんなに言葉が丁寧でも、聞いていることはひたすら低俗。
いつの間にか、30センチほどの距離にまで近づいて来ている顔に、あらためて嫌悪感を覚える。

「そういう話は、別の人とお願いできないかしら」
「いえ、火野様にお伺いしたいので」

そう言うなり、彼女の口の端がきゅっとつり上がった。
レイが本能的に危機感を覚えたのと、少女がレイに体当たりしてきたのとは同時だった。

「な……ぁ……?!」

何が起きたのか、すぐには理解ができなかった。
そもそも、図書館にいたはずなのに。
一瞬目をつぶってしまったレイがうっすらと視界を確かめると、目に映るのは不思議な空間。
上も下も無くなってしまったような、一面桃色と白のマーブル模様。
ゆっくりと起き上がってみると、強く打ちつけた背中がずしりと鈍く痛む。

――ここは一体どこなの……?

シンプルな言葉ながら、これ以上にレイの気持ちを的確に表すものはない。
正義の味方なんてよく分からないものをやっていなければ、更に取り乱していたかもしれない。

「あら、驚かないのですね」

突如現れた背後の気配に、レイははっと身構える。
そこに浮くのは異様に色の白い、一人の少女。
さっきの彼女と同一人物であるはずなのだが、どこか違和感を覚える。

「あなた、この世のものじゃないわね」

その違和感の正体を探りながら、レイは注意深く声をかける。
もう一つの職業柄、得たいの知れないものとの会話もそこまで抵抗があるわけではない。

「もう、何十年も前にお別れいたしましたもので」

その言葉を聞いた時、レイはあることに気がついた。
彼女の着ているT.A女学院の制服は、レイのものとよく似ているが、リボンの形が異なる別物だ。
そして、その型の制服を、レイは少し前に見たことがあった。
T.A女学院の節目の年を祝った、記念の式典の中で。

「もしかして……この学校の、生徒だったの?」
「そうなりますわね」

肩をすくめて、にこりと微笑む。
こうして見ると、ただの可愛らしい笑顔だ。
どうしてあの時、妖しさを覚えたのだろう――?

「火野様、わたくし一つお願いがありますの」

疑問の答えを探そうとしたレイの思考をさえぎり、少女はふわりとレイに迫った。
その動きはまるで重力など存在しないかのようで、改めて彼女は所謂"霊"なのだと実感する。

「……お願い?」
「大したことではありませんわ……火野様ほど、お力のある方でしたら」
「一体何を――」

レイの発言を待たず、少女の姿がレイの身体を通り抜ける。
しまった、と思った時にはもう遅い。
――幽霊にかかわるなんて、面倒以外の何者でもないのに。
滲む視界と意識の中で、レイは油断した己を呪った。
posted by ひるめ | 16:04 | 美奈レイ | comments(0) | trackbacks(0) |
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