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春の嵐 -2-

風が強いですね…これが、春の嵐というものか。

ということで(?)昨日の続き。美奈レイです。








「あら?まだ帰ってない?」

いつものように縁側からの侵入に成功した美奈子は、人の気配がないレイの部屋に驚いた。
もう、太陽が沈んでからずいぶんと時間が経つ。
いくらレイが忙しいといっても、こんな時間まで帰っていなかったことなどないはずなのに。

「かくれんぼ……なわけないわよね、レイちゃんに限って」

あり得ない、と独りごちて、美奈子は改めて室内を見回す。
そこには、レイが帰った形跡など全くない。
ここはやはり、帰っていないと考えるほうが妥当だろう。

「どこ行っちゃったのかしら……おじいちゃんだって、心配するでしょうに」

言いながら、携帯の画面も確認する。
今日、美奈子がレイの家を訪れることは、数日前から予定に入っていたはずだ。
事情があって帰りが遅くなるなら、何か一言くらいあってもいいだろうに。
新着メールはないと告げる画面を閉じて、美奈子は脳内の可能性を探る。
メールの一つも送れないほど忙しいということなのか、それとも何かに巻き込まれたか。
恐らくは後者だろう、と美奈子の勘が反応する。
しかしそれならば、どう対応して良いものやら。
ルナやアルテミスから何の連絡もないということは、前世からの因縁で対峙せざるを得ない敵とは種類が違うということだ。
そうなると、情報の集めようがない。

「とりあえずは……T.A女学院に行ってみるしかないかしら」

既に別の場所に移動している可能性もないではないが、手がかりくらいは見つかるかもしれない。
そう思い立った時、美奈子は目の前で障子が音もなく開くのを見た。
誰、と聞くまでもない。
そこに立っていたのは、レイその人だったからだ。

「……なんだ、レイちゃんだったの」
「私以外でここに無言で入ってくるなんて、美奈くらいしかいないわ」

相変わらず、わずかに毒を含んだ物言い。
ただの杞憂だったのか、と美奈子は胸をなでおろす。

「ちょっと学校の用事で遅くなっちゃって」
「ううん、大丈夫」

レイちゃんに会えたから、それだけで十分。
そう言う美奈子に、レイが目を細める。
嬉しいことを言ってくれるのね、とはいつになく素直な反応だ。

「私も、できるだけ早く帰ろうと努力はしたんだけど」
「もう良いってば。ね?」

そう言ってレイを座らせると、美奈子は台所へ向かう。
いつものように紅茶を用意して、二人でのんびり過ごそう。
今日は二人で飲もうと、寄り道してティーバッグも購入してある。
晩御飯も少しくらいは手伝って、それから――

「ぅわっ?」

妄想の世界へと羽ばたいていた美奈子は、予期せぬ背後からの抱擁にとっさに反応できなかった。
レイが自らスキンシップをとってくるなど、思い描くことはあっても現実になることなどほとんどない。
しかし、ぱさりとかかる黒髪の感触が、夢ではない、と教えていた。

「レ、レイちゃん?どしたの、急に」
「別に……ちょっと、そんな気分だったから」

言いながら、レイにはその腕を解く気配がない。
珍しいこともあったものだ、と思いながらも、悪い気はしなかった。
普段はこんなこと、絶対に起こり得ないのだから。

「何?何か、嫌なことでもあった?」
「いいえ……本当に、何でもないの」

不思議な気分だな、と美奈子は思った。
この状況は、レイが甘えてくれている、と言っても良いのだろうか。
それならば、こんなに嬉しいことはない。

「何の理由もないのに、こんなことしたことあったっけ?」
「……いいじゃない、そんなこと」

耳元で囁く声はあくまでもクール。
かすかに力の増したレイの抱擁に応えるように、美奈子もその手をそっと包む。

「ねえ、レイちゃん――」

甘い気分のままでレイを求めようとした美奈子の言葉を、シュー、というやかんの音がかき消した。
紅茶を淹れるため、火にかけていたやかんがカラカラと音を立てる。
その音が合図だったかのように、そっと離れる温もり。
それに落胆を覚えないでもなかったが、やかんを放っておくわけにもいかない。
仕方なくそれを手に取ると、準備してあったカップに注ぐ。

「レイちゃん、紅茶で良いよね?今日、帰り道に買ってきたんだ」

そこに、ティーバッグを投入しようとした美奈子の手を止める、レイの指。
またしても予想外のレイの行動に、美奈子はレイの顔を見つめた。

「な……何?」

いつもなら、良いわね、なんて言って笑顔の一つも見せてくれるのに。
今日に限って、レイの表情が浮かない。
レイが好む紅茶の香りを買ってきたはずなのに、どうして。

「えーと……もしかして今日、紅茶の気分じゃない、とか?」
「そう、ね」

沈んだ表情を浮かべたレイの指に、美奈子の手を離してくれる気配はない。
むくりと頭をもたげた不安に、美奈子はレイの様子を再度伺う。
何か、おかしなところがあるわけではないはずなのに。
いつものような、一緒にいて和らぐ感じがないような気がする。
あくまでも、気がする、という程度の違和感。

「離して……もらえる?」
「え?あ、あぁ、ごめんなさい」

ぱっと解放される美奈子の手。
その反動で、思わず取り落としたティーバッグ。

「あぁッ……!」

レイがしまった、とでも言うように目を見開くのが見えた。
そしてその瞬間、美奈子の中にあった違和感は確信へと変わる。

「あ……あなた、一体誰なのっ?!」

本物のレイではない、そうであるはずがない。
鋭く睨む美奈子の視線を正面から受け止め、美奈子の目の前でレイが微笑む。

「まさか、わざわざ魔除けの香りを選ぶなんて……あなた、ずいぶんとついてるのね」

そんな言葉を吐くレイの身体が、二重に滲む。
何かに憑かれている、というのが一番しっくりときた。
厄介ごとに巻き込まれた、という美奈子の予想は確かに当たっていたのだ。

「レイちゃんを、返して」
「言われなくとも……いずれ、お返しする予定でしたわ」

そう言うなり、ぶるりと二重のレイが震えて、片方だけが地面にくずおれる。
慌ててそれに駆け寄った美奈子の前で、もう一人のレイは徐々に形を変えていった。
そうして現れたのは、レイと同じ制服を着た色の白い少女。

「幽、霊?」

重力を無視して宙に浮くその姿は、まさに幽霊そのもの。

「えぇ、まあ……わたくし、一人では学校から離れられなかったものですから」

だから、憑依する相手を探していた――それが少女の理由。
火野様には危害を与えておりませんわ、という言葉通り、レイの身体に目立った外傷は見当たらなかった。

「レイちゃんの身体を借りてた……ってこと?」
「まあ、そうなりますわね」
「どうして……そうまでして、どこへ行きたかったの?」
「あの方を、どうしても一目見たかったのですわ」

遠くを見つめる少女の瞳は、恋に煌いているようにも見えた。
いや、恋と呼ぶにはあまりにも深く、遠い慕情。

「本当は、乗っ取ることも考えましたの……でも、火野様のお力があまりに強かったものですから」

結果、交渉して少しの間だけ身体を借りていた。

「で、会えたの?その人には」
「えぇ……もう、地面の下にいらっしゃいましたけど」

少しだけ、お掃除もさせていただきましたわ。
嬉しげに笑うその言葉には、きっと偽りはないのだろう。
"会いたい"という気持ちにも。

「通りで帰りが遅かったわけだ」
「まさか、こんなに可愛い待ち人がいらっしゃるなんて思いませんもの」

結局、今までのレイの行動は、すべてあの少女のものだったということなのだろうか。
美奈子は一抹の寂しさを抱えながら、少女を眺める。

「でも、私が身体をお借りしていたのはそこまでですわ。火野様の霊力は、伊達ではありませんから」

そんな美奈子の気持ちを見透かしたように言い残して、少女の姿はふわりと透けて見えなくなった。

「え、ちょ……」

どういうことよ、と問う間もなく消えてしまった少女。
その言葉の意味を考えてみると、はじき出されるのは一つの結論。

「夢……じゃないのよね、やっぱり」

後に残ったのは、意識を失っているらしいレイの重みと紅茶の香りだけ。
それらの感触は確かに現実のもので、美奈子はふるふると首を振る。

「全く、人騒がせな幽霊」

腕の中で眠るレイの寝顔は安らかで、とても先ほどまで何かに取りつかれていたとは思えない。

「レーイちゃん」

目を覚ましたら、本当のところを聞いてみよう。
もしかしたら、照れて認めてくれないかな。
そんなことを思いながら、美奈子はレイの寝顔に一つ、口付けを落とした。

 

 


どうも、ひるめです。
いろいろと手続きも終わりまして、あとはもう旅立つだけとなりました。

えー、レイちゃんという人がいながら、幽霊ものって扱ってなかったなっていう発想から…。
しかしながら、幽霊ならもっといろいろできた気もしないでもない。
インパクトだけでいうと、女子高バトルの方が強いしなぁ…あの雰囲気がすごく好きです。THE 美奈レイ。
posted by ひるめ | 15:38 | 美奈レイ | comments(0) | trackbacks(0) |
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