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君の名を呼ぶ side:R

……なんというか重いですたぶん……そんなまこレイ。







きっかけ、などという明白なものは、きっと存在しない。
少なくとも、レイの場合は。
思い出してみても、彼女に好意を持ち始めた瞬間と断定できる出来事は思い当たらない。
強いて言うなら今まで彼女と過ごしてきた時間の全てと言うべきだろうか。
他人から見れば、そんな些細なことで、と言われても仕方ない。
それくらい、彼女の仕草の一つ一つが、レイの心をとらえて離さない。
戦闘の時の鋭い瞳。
普段の何とも言えない優しげな笑み。
風呂上りの湿った髪。
見た目によらず乙女な趣味。
可愛い、と言えば、照れて力一杯に否定するところだって、今では愛らしくて仕方がない。
その感情が、ただの友人に向けるものとは異質であることも――そしてどういう意味を持つかということも、レイにはよく分かっていた。
それはかつて、一人の男性に向けられ、自身の身を痛いほどに焦がしたのだから。
しかし、この胸中をそのまま素直に伝えてしまったなら、今のまま、気のおけない友人ではいられなくなる。
それくらいは、レイにだって分かっていた。


その彼女が、目の前で憂いを帯びた顔をしている。
それをレイは、歯がゆい思いで見つめていた。
事の発端は、数日前に遡る。
彼女が仲間になってから、「木野さん」が「まこちゃん」に変わるのにそう時間はかからなかった。
それも、あの人懐こいうさぎのおかげで。
しばらく時間はかかったが、レイもそれなりに"ちゃん付け"に慣れてきた頃。
静かに、しかし確実に事は起こっていた。
それは本当に僅かな変化で、最初に気づいた亜美でさえ、確証は無さそうに切り出したのだった。

「辛そう?」
「えぇ……どこがどう、とは言えないんだけれど」

亜美が突然訪ねてきたのは、ある日の夕方のこと。
彼女によれば、まことはうさぎのおかげもあってか、少しずつクラスにも馴染み始めているのだという。
そこに憂慮する要素などないように思えるのに、まことの表情にはどこか陰があるのだと。
他の誰かが言ったのであれば、気のせいじゃないかしらと切り捨てたかもしれない。
だが、我らがブレーンが言うのなら話は違ってくる。
誰よりも長けたその冷静さ、そして客観的な視点。
それを知っていれば、単なる勘違いだなどと切り捨てることなどできない。

「心当たり、ないかしら」
「と、言われても……」

そもそもが、同じ学校に通っていないのだから想像でしか物を言えない。

「ごめん、私にもちょっと」
「そうよね……ごめんね、レイちゃん。私……誰かに聞いてほしかっただけだと思うから」

気のせいかもしれないし、と言った亜美だったが、彼女の目はそうは言っていなかった。
そのことがあって、レイは今まで以上にまことに注意をそそぐようになる。
そこで気づいたのは、まことの表情にたまに覗く"陰"だった。
やはり、二人だけで話す必要があるのだろうか、しかしどうやって?
そんなことをぐずぐず悩んでいる内に、あっという間に過ぎてしまう数日間。
まことと二人になる機会がめぐってきたのは、全くの偶然だった。

「あれ、レイちゃん。偶然だね」

ばったりと街中で彼女に出くわす。
これほど単純なことはない。
買い物帰りらしい彼女は大きな荷物を両手にぶら下げていて、学校帰りのレイは思わず、一つ持つわと申し出た。
いいよ、などと最初は笑っていたまことだったが、レイには珍しく食い下がった結果、軽い方を渡してくれた。
これで少なくとも、彼女の家まで行く口実はできたことになる。
自分が、口実がないとこんなにも動けない人間だったとは。
そんな自分に苦笑しながらも、とにかくレイはまことの家にあがることに成功した。

その時のレイには、彼女の陰の正体など予想もできなかった。
だから、単刀直入に聞いたのだ。
今思えば、それは土足で彼女の領域に侵入するに等しいのに。

「やっぱりレイちゃんには、隠し事とかできないね」

困ったように笑って、しかしまことはそれ以上の言葉を発することをしなかった。
レイがまっすぐに見据えると、まことは戸惑ったようにうつむく。
打ち明けてしまうか否か、迷っている。
まことの仕草が、そうレイに告げている。

「無理に聞くつもりはないけど……」

でも、だいぶ溜まってるんじゃない?
その言葉に、まことの視線が揺れる。
返答がなくても、それは暗に"もう限界だ"と語っていた。

「よかったら、その……話してもらえないかしら、まこちゃん」

すん、と鼻をすする音が聞こえた気がした。
――泣いている?

「あ……え、と」

まことが涙をこらえている、その事実はレイを困惑させた。
何をどうすれば良いのか。その答えをレイは知らない。
他人が泣いているところに居合わせたのなど、最後はいつだったかも思い出せない。

「ま、まこちゃん……?その、本当に無理しなくても」
「ご、め……ちょっと、思い出し、ちゃって」

切れ切れの言葉は、確かに彼女が泣いていることを表している。
そしてそれをレイに見せないように、なんとか抑えようとしていることも。
しかしながら、往々にしてその努力は実らない。

「思い出した……?」
「その、さ、本当に……些細なこと、だ、から」

語尾がぐずりと濁って消える。
二つ、三つと増えていく染みを眺めながら、レイは自問する。
どうしたら良い?

「まこちゃ――」
「ごめ、ホント……」

レイを遮るようにまことがレイの両腕をつかむ。
その様子に、レイは不意にその陰の意味を悟った。
さっきまでの彼女の表情は、古傷をえぐられた時の、痛みをこらえて笑う表情にも似ている。
その、鈍く甘い痛みの正体を、レイは知っていた。
フラッシュバックする、一人の男性。
雨の日の、悲しいピアノ。
あの時まことから少しだけ聞いた、昔の話――

「もしかして、その……先輩?」

かすれた声でそう問うと、まことがそっと頷いたように見えた。

「ずっ、とさ……忘れよう、と思ってる、のに」
「……まこちゃん……」
「ダメ、なんだ……それ、聞くたび、に思い出しちゃっ……て」

「まこと」だから「まこちゃん」
何ら捻りのない、誰でも思いつく愛称。
しかしその呼び名は、恐らく彼女にとって、ありふれたただの愛称以上の意味を持っている。

「……あ、の」

どうしたら良い、こんな時、どういう風にフォローしたら。

「大丈夫、だから……ありが、と」

それでも笑おうとして、どうしてそんなに他人のことしか考えられないのか。
だが、それ以上まことの過去を問い詰めることは、レイにはできなかった。
それはもう、ただの友達が踏み込んで良いレベルを超えている。

「ごめ……暗く、なっちゃった、ね」

その時の、送っていくよ、という言葉は、一人にしてくれと確かに聞こえた。


ひょんなことで知ることになった、まことの憂い。
他人であるレイが、他の仲間に勝手に暴露してしまうわけにもいかないだろう。
こんなことなら、安易に聞くべきではなかった。
そう思ってしまうほど、その事実はレイの心に重くのしかかった。

「まだ引きずってる……ね」

あんなまことを見るのは、初めてだった。
"まこちゃん"と呼ばれるたびに、彼女の中では先輩がよぎっていたに違いない。
そしてそのたびに、忘れることなど到底できない、大きすぎる"先輩"の存在を自覚せざるを得なかったはずだ。
はぁ、とため息をつき、レイはごろりと横になる。
まことの話を聞いてからというもの、レイはどこかやるせないやり場のない感情にたびたび襲われるようになった。
"先輩"の話を聞いてショックを受けている――そんな自分がいるのも意外だった。

彼女が過去にどんな経験をしていようと、今の自分には関係のないこと。
自分の知らない過去があるのは、仕方のないこと。

そういう覚悟でいたはずなのに、いつの間にか過去にからめ取られている。
この先も一生見ることはないであろう"先輩"に対する思いが、どろりとレイの中で渦巻く。
醜い感情だ、と思った。
恋だの愛だのと名づけたところで、それは俗にいうほど爽やかでも綺麗でもない。
ふたを開けてみれば、どうすることもできない嫉妬と独占欲にまみれているのだから。

「まこちゃん、か」

そう呼ばれて、彼女はどんな顔をして振り返ったのだろう。
それを見ることができたのも、"先輩"しかいないのだ。
いっそ、好きだと言ってしまおうか。
こんなところで悩んでいるよりも、それはずっと建設的な考えのように思えた。
しかし、レイの中の何かがそれを制止する。
それは理性というよりも、むしろある種の後ろめたさに近かった。
確実に傷心状態にある彼女にそんな告白をするのは、ただつけこんでいるだけにすぎないのではないか。
そんなことをして想いを受け入れてもらったところで――

「バカね……本当、バカ」

誰に対しての言葉かは分からない。
まことに向けられたものかもしれない、自分に向けたものかもしれない。
満たされることのない胸を抱えて、レイはもう一度寝返りを打った。






どうも、ひるめです。
最近本当に遅筆になってて自分でももどかしい…そんな状態ですorz

レイ誕用に考えていたのですが、重たいものしかでてこなくて結局断念したとか…そんな話です。
一応続くのですが筆が止まる止まる…まだ先が見えない今日この頃(殴
どこかで読んだ、「原作レイちゃんのまこちゃんに対する呼称が"まこちゃん"から"まこと"にどう変わったのか」って疑問を受けてずっと書きたかったんですが…。

しかし原作を参照していないという…ダメじゃん。
posted by ひるめ | 17:14 | まこレイ | comments(0) | trackbacks(0) |
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