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君の名を呼ぶ side:M

前回の続き。
まこレイっていうよりレイまこですねこれ。







――こんなに広かったのか、この部屋。

そんなことを思ってしまった自分に、相当弱っているな、と自覚する。
もう忘れようと決めたのに――決めたはずだったのに。
まっすぐに自分を射抜く瞳を思い返し、まことは一人肩を落とす。
レイは鋭かった。
それこそ、全てを暴露してしまいたくなるくらいに。

「言わないつもりだったのにな」

あだ名はまこちゃんで良いよね!と言われ、その時は確かに抵抗なくそれを受け入れたはずだった。
もう、その名で呼ばれても、痛むことなどないと思っていた。
それが、ほんの数週間で崩れてしまうとは……自分でも予想外としか言いようがない。
まこちゃん、と呼ばれるたびに思い出してしまう。
耳に心地よいあの声と、優しげなあの瞳とを。
強くならなくてはいけないのに、忘れなくてはならないのに。
そんな決意が、こんなにもあっさりと崩れ去るものだとは知らなかった。
やるせない倦怠感を覚え、ソファに体重を落とした時、机に放置していた携帯が鈍い音を立てて振動する。
ライトの光り方から判断するに、メールだろうか。
ぱかりと開いた画面には、"月野うさぎ"の文字。
題名や内容から判断するに、学園祭の内容に関することらしい。
クラスで劇をやることになったが、衣装を作るのを手伝ってほしい。
要約すれば、うさぎからのメールはそういうことだった。
それだけの内容を伝えるのに、絵文字がキラキラと踊るメールは数行にわたる。
針仕事なら任せといて、とメールを返し、ふと演目に関する記述が何もないことに気づく。
劇と一言にいっても、題材が何かによって衣装も異なってくるのではないか。

「……まあ、明日聞けば良いか」

起き上がってご飯を作る気すら起こらない自分に驚きながら、まことはゆるりとソファに身を投げ出す。
このまま寝ても良いだろうか。
そう思ってしまうほどに、身体は妙なけだるさを訴えていた。


これやるんだよ、と言われて渡された台本の表紙には「シンデレラ」の文字。
この年にもなってシンデレラなのかと思わないでもなかったが、聞けばわりと本格的なステージになるらしい。

「まこちゃん、こういうのすごく得意そうだから」

ね、と笑ううさぎからするに、きっと自分を衣装係に推したのは彼女なのだろうな、と思う。

「あぁ、うん。任せといて。ちゃちゃっとやっちゃうからさ」

美術部がデザインしたという衣装はきらきらしていて、シンデレラ役の子によく似合うだろうと予想ができた。
見ている者に、どこか儚ささえ覚えさせるような容姿。
継母たちにいじめられるシンデレラのイメージにはぴったりの配役で、彼女ならきっと良い物ができるだろう。
良いものにしようね!とうさぎに明るく言われ、まこともつられて頷く。
洋裁は嫌いではない、このようにクラスの活動に関われることも素直に嬉しい。
それなのに、胸の奥に霞がかかっているような、そんな錯覚に囚われた。


騒がしさの去ったまことの部屋で、まこととレイは同時に息をついた。
当初はまことのみで作るはずだった衣装。
だが、いつの間にかうさぎがやりたいと言い出し、補助として亜美が参加すれば美奈子も何故か参加を表明する始末。
ついでだからと加えられたレイも交え、ついさっきまでまことたちは作業していた。
そんな中でうさぎが帰宅し、美奈子や亜美も席をはずし、気づけば二人だけになっていたわけで。

「……ため息つくと、幸せが逃げるわよ?」
「……そっちこそ」

らしくない軽口を叩くレイに、気を遣われていると気づいた。
あんな話をした後だ、無理もないのかもしれない。
それにレイはそんな色恋沙汰などに興味などない――少なくとも、まことにはそう思えた――はずだから、余計に困ったのではないだろうか。
二人しかいないのに微妙に開けられた距離も、まことにはレイが気を遣ってくれているとしか思えない。
そしてレイは、そこに踏み込むことに躊躇っているようにも見えた。

「あー……えっと、さ」

悪いクセだな、と思った。
踏み込んできてほしい、など甘えでしかない。
今までだってそうやって、待っているばかりで。
依存と何が違うのかと言われれば、答えに窮することも目に見えている。

では、ひけらかせば良いのだろうか。全てを?
みんなの評価とは裏腹に、化けの皮を剥げばただの醜い人間だ。
そんな自分でも、彼女は受け止めてくれるだろうか。本当に?

「あのさ、」
「どうしてシンデレラなのかしら」

口を開きかけたまことを遮るレイの呟き。

「え?」

独り言なのか判断がつかず、まことはひとまず聞き返す。

「だってほら……シンデレラ以外にも、劇なんていくらでもあるじゃない」
「それは、私に言われても」

きっとやりたいって人がいたんじゃない?と言うと、それもそうね、と気の抜けた返事。
それを受けて、まことはようやく、レイが聞きたいことはそんなことではないのではないかと気づく。
中空をさ迷うレイの視線は、何か新しい話題を探そうとしているようでもある――分かりやすい反応だった。

「シンデレラってさ……好きだった?」
「何、突然」
「あたしさ、主人公タイプのキャラクターって好きにならないっていうか。単なるあまのじゃくかもしれないけど」

だから、シンデレラもあんまり好きじゃなかったんだよね。

「たしかにさ、献身的で綺麗で虐げられてて……そんなシンデレラが幸せにならなかったら、あのお話は成立しないんだよ」
「まあ、そうなるかしら」

戸惑いながらも、レイはひとまずまことの話題に乗ろうと決めたようだった。
これから自分がレイに言うことは、ある意味ではひどく醜く、偏った考えのはずで。
そんなものを受け止めてくれるだろうか、そう考えると、不意にのどの奥がつまった。

「……でも、さ。あたしは分かるような気がしちゃうんだよね。その、姉の気持ち、とかも」
「姉?」
「シンデレラみたいなのがいたらさ、何したって敵わないじゃん……そこで、相手を傷つける行為に走っちゃうところ、とか」
「……」
「姉たちだってさ、原作だと容姿とかも散々な描き方されてるけど、本当はそうでもなかったんだと思うんだよね」

どんなに綺麗な花であっても、それ以上に可憐な花があればくすんでしまう。
シンデレラに出てくる姉達が、その花でなかったという証拠などない。
そして、きっと、シンデレラがいたがために実らなかった恋だって。

「なんて……結局、手を出しちゃったら終わりなんだけどさ」

同情の余地はあっても、シンデレラに姉たちがした行動は褒められたものではないし、仕方ないと割り切ることなど到底できない。
それでも、姉たちや、他の花に立場を奪われた花たちを、他人とは思えない――。
自嘲気味な言葉を、レイがどう受け止めたかは分からなかった。
嫌われるかもしれない、そこまで行かなかったとしても、こんな感情を向けられて、きっと困るに違いない。

「……その姉が、自分と似てるって言いたいわけ?」
「ま、そう……かな」

そう言ったきり、二人の間を覆う沈黙。
今さらながら、まことの中に後悔が渦巻いていく。
今までのように、明るく笑っていればよかった、きっとうさぎたちが期待している自分はこんな存在ではないのだから――

「バカね、本当」

目を伏せるまことだったが、レイの口調は思いのほか優しいものだった。

「他人と比べたって……どうしようも、ないのに」

言いながら、レイはどこかでその言葉を自分に向けているようでもあった。
他人と比べたって、どうしようもないのに。
レイにとっての他人とは、一体。

「あなたはあなたなのに……そこにたった一輪しか、咲いてないのに」
「……レイ、ちゃん?」

今度はまことが困惑する番だった。
レイの言葉の真意が見えない。
何を思って、彼女はそんな言葉を吐いているのか。
そんなことを考えていると、いつの間にかレイの体がすぐ近くにあった。

「……?!」

沈黙のままに両手で頬を包まれ、強制的に合わせられる視線。
改めて直視するレイの瞳は、どこまでも深く底知れない。

「まこと」
「は……い?」
「もしかしたら、この世界には、たくさんの花が咲く世界もあるのかもしれない」
「う、ん」
「だったら、別の世界に行けば良いことだわ」
「へ?」

レイの顔が近い。吐息が近い。
今の状況が理解できず、まことは間抜けな声を漏らす。

「シンデレラの姉たちが不幸だったのは、シンデレラのいる世界にとどまろうとしたから」
「シンデレラのいる、世界……」
「花園で群れている必要もなければ、誰かの物語の脇役に甘んじている必要もないのよ――まことはまことなんだから」

そこでレイは一つ息をつき、まことの頬をそっと開放した。

「……少なくとも、私の世界では」


――あなたしか、咲いていないの。


小さな声だが、それははっきりとまことの耳に届いた。

「え……あ……?」

脳が上手く機能していない。
耳から入ってきた情報が、上手く脳にまで届かない。
今、彼女は何と言った?

「レ、イ……ちゃ」
「ごめんなさい、私帰るわ」
「あ……うん」

待ってくれとは言えなかった――言う勇気もない。
そそくさと片づけをして去っていくレイの後姿を、まことは呆然と見送るしかなかった。

 

 


どうもひるめです。
ちょっと大学の行事の方でばたばたしてまして、なかなかまとまった時間をとれなかったひるめです(言い訳
まあその他、情報系ということでHTML書いたりCに少しだけ触れたりしてました。
まだまだお遊びレベルなわけですが……そのうち、過去ログの方もきちんと作り直したいです。
今ソースを見ると拙い&汚い。そう思えるようになっただけ成長、ということにしておきますヽ( ´ー`)ノ

posted by ひるめ | 16:51 | まこレイ | comments(0) | trackbacks(0) |
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