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君の名を呼ぶ M&R

本っっ当にお久しぶりですお前何やってたんだって話ですよねすみません(汗)

前回の続きというか最後というかなんというか…。







ほてった体を、外気が冷ましていく。
首のわきをすり抜けていく風に身を預けながら、レイは一人、マンションの下で息をつく。
数分前までと、今の自分がまったく別人のようだった。
器だけは同じなのに、中身はすっかり入れ替わってしまったかのような。
突発的にとってしまった行動――あまりに自分を卑下するまことを、見ていられなかった。
彼女を今でも縛り付ける亡霊から、彼女を解き放ちたかった。
他人と比べても、なんの意味もない。
たとえレイの世界に、まこと以外の対象がいたとしても、彼女の存在の大きさにはかないそうもない。
それほどまでに大きくなったまことの存在。
そこまで考えて、自分で自分をまことの言う"センパイ"と比較していたのではないか、と思い至る。
まことの中で、レイとは一体どういう存在なのか。
もっと言えば、"センパイ"という存在を超えるほどの存在であるのか。
自問してから、虚しくなった。
未だに彼女を縛る存在に、後から知り合ったレイがかなうはずなどない。

――まあ、それでも良いかしら。

もともと、"センパイ"になりかわろうなどとは思っていない。……思っていない。
好意を伝えられれば、まことを見つめる人間は一人ではないのだと伝えられれば、それで良かったはずなのだから。


*   *   *


一人残された部屋の中で、まことははっと我に返る。
同じように一人になった数日前と、状況は同じはずなのに。
あの時と違うのは、静まりそうにもない心臓。
レイの瞳の奥底に見えた気がした、あれは静かに、だが確かに燃える炎だった。
触れたら火傷をするのだと頭では分かっているのに。
炎とは、なぜあんなにも触れてみたい衝動を起こさせるのだろうか。
幼いころ、揺らめくあの橙色が、自分を傷つけるとはどうしても信じられなかった。
そして、何度も触れようとして、その度に止められたのだった。
レイに触れられていた頬が熱い。
無性に喉の乾きを覚え、まことはゆるりと立ち上がる。
レイに言われたことの意味を、まだ信じられない自分がいる。
一方で、驚くほど冷静に受け止めている自分もいる。
乱暴に水をそそぎ、そのまま喉へ流し込むと、食道、そして胃のあたりからじんわりと冷たさが伝った。
しかし、体の芯はまだほてったままだ。
レイの言葉が熱をもって、まだ体の中で静かに燃えているような。
あんな醜い一面をさらけ出したはずなのに、なぜか返ってきたのは肯定――それも、身に余るほど、激しく強い。
これを、人はどう呼んだろう。

「……バカなのは、あたしか」

まだ彼女は近くにいるのだろうか。
いなかったとして、家だってそんなに遠いところにはない。
会って何を言えば、などとは考えなかった。


*   *   *


バスに揺られながら、レイは流れていく外の景色をぼんやりと眺めていた。
あんなに高まっていた感情が、うそのようにこの数分で冷めてしまっている。
人とはこんなにも感情に落差のある生き物だったのか、と驚きを覚えながら、レイは掴んでいた手すりを強く握りしめる。
後悔、とは少し違う。
不安?……何が不安だというのだろう。

「……まこと」

口に出すと、ひりりとどこかが痛んだようだった。
あの時は他のことを考える余裕などなく、意識していなかったが、彼女を呼び捨てにした記憶がある。
思えば、"まこちゃん"と呼ぶことで、自分は彼女と無理にでも距離を作ろうとしていたのかもしれない。
友人として、良識のある距離を。
こんなにもあっさりと、しかも自分が崩してしまうとは思わなかったが。
なんだかんだと言いながら、結局のところは彼女に嫌われているのを恐れているのだ。
まことがこんなことで人を嫌うような人間ではない、とは思う。
だが、レイの思いを知って彼女はどう感じただろう。
一つだけ確実なことは、次に顔を合わせるときには、今までのままの関係性ではいられないということだ。
それが、どういう方向に転ぶかは分からないが。

「あっ」

急にぐらりと車体が傾き、ぼんやりとしていたレイは一瞬体勢を立て直すのが遅れた。
転ぶまではいかないが、背中に鈍い痛みが走る。
車内は静かだった、こんなことはいつものことだ。
背中の痛みに不意に泣きたくなるのを抑えて、レイは同じ場所に戻る。
ふと見た次の停車場は、レイが降りる一つ前で、いろいろなことがどうでもよくなった。
もうすぐバス停、というタイミングでボタンを押すと、予想外の事態とでもいうようにバスがガタン、と停車する。
乗客の視線が一斉に集まった気がしたが、レイは気にせずバスを降りる。
気にしているのに気にしていないふりをするのは、もう慣れてしまった。


*   *   *


ぐいぐいと自転車をこいでいく道すがら、何度かすれ違う長い黒髪に思わず反応してしまう。
そんな自分に可笑しささえ覚えながら、まことはひたすらにレイの家を目指す。
考えてみればレイはバス移動で、こんなところで会うことなどないのだが、今のまことがそこまで思い至るはずもない。
傾きかけた日は視界の端でちらちらと揺れて、ふと目をやった夕焼けは奇妙なほど綺麗だった。
明日は晴れだろうか。それなら良いなぁ。
呑気なことを考えながら、自転車をこいでいたまことの足がふと止まる。
まことを追い越していったバスが、ガタンと荒々しい急停車。
それだけならきっと目も留めなかっただろうが、そこから降りてきた少女はまさに思い浮かべていたその人で、まことは思わず声をあげていた。

「……レイ……!」

今の今まで彼女に会うことだけを考えていたはずなのに、いざ目の前にすると言葉が出ない。
それは相手も同じであるらしい、がちりとぶつかった視線は、絡み合ったまま離れない――離せない。
見開かれたままで固まったレイの瞳の奥には、まだあの炎がちらついているのだろうか。

「あ、その」

どうにかして会話の糸口をつかもうと声を出してはみるものの、やはり続く言葉はない。
傍から見れば、不思議な光景だっただろう。
二人して、言葉もなく見つめあっているだけ、など。
どさりと鈍い音がして、レイのカバンが落下していくのが、スローモーションのように見えた。
その音に、魔法でも解けたかのようにレイの視線が解かれる。
そこからのレイの動きは、さっきまで停止していたのが嘘のように、すばやいものだった。
取り落としたカバンをさっと拾い上げると、まことに背を向けて一目散に走り出すレイ。

「ちょ、レイ……?!」

呼び止めるまことの声を振り払うように、駆けるレイの背が少しずつ遠くなる。
意外と速いレイの足に感心しながら、まことは我に返ってペダルに足をかけ直す。
どんなに全力疾走したところで、自転車のスピードにかなうはずもないのに。
一体どんな顔をして走っているんだろう。
不意にそんなことを考えた。


*  *  *


なぜこんなことになったのか、自分でもよく分からないまま、レイはそれでも足を止められなかった。
安易な思いつきでバスを降りて、思いがけず彼女に出会った、それだけのことなのに。
後ろから、彼女は追いかけてきてくれるのだろうか。
それを確かめることは簡単だ、今すぐにでも足を止めて振り返ればいい。
しかし、そんな単純なことが、今のレイにはひどく難しいことに思えた。
足を止めれば、嫌でもあの瞳に捕まってしまう。
伝えたかったのは、"あなたは一人じゃない"ということ、それだけ。
好意を伝えられればそれで良い……なんて。

――笑ってしまう。

綺麗事を言うのも大概にしろ、と言いたかった。
本当はまことの中の"センパイ"を塗りつぶしてでも、彼女の視線を自分のものにしたかった。
どんなに表面上だけを綺麗に飾ったとして、一皮剥けばそれは単なる欲望でしかない。
手に持ったカバンを強く握って、まぶたをきつく瞑って、蹴る地面から返ってくるのは硬い抵抗。

「危ないっ」
「えっ……」

鋭い声が耳を貫くのと、体がふわりと浮くのは同時だった。
直後に感じる、柔らかい感触。
遠くで鈍い金属音。
何かが擦れる鋭い音。
あれはきっとまことの自転車だ、と思った。

「おま……怪我したらどうするんだ!」

思わずびくりと体を震わせたレイがそろそろと目を開けると、少し遅れて軽自動車が動きを止めたところだった。
まことの肩ごしに見えた運転手の視線が、"何やってんだ"と一瞬だけ厳しく光る。
その後、何事もなかったかのように発射するその自動車を見送りながら、レイは体の力がふっと抜けるのを感じた。
そうだ、今日はいつもと違うバス停で降りたのだった。
普段通りのつもりで走っていた、そのせいで。

「……ったく、見てらんないなホント」

呆れたように――実際呆れていたのだろう――まことが息をつき、ゆるゆるとレイの頭が活動を再開する。

「あ……自転、車」
「は?」
「いや、だから、自転車……」

レイを支えていたまことの腕がふっとゆるむ。
かと思うと、突然笑い始めるまこと。

「え、な、何」

彼女の反応の理由が分からず、レイは戸惑う。
あんな勢いで放り出したのだから、彼女の自転車が無事なはずはない、そんな思いで口にした言葉だというのに。

「や、だってさ……まあ、いいか」
「だからどういうことよ」
「ううん、なんでもない」

まことは一人、分かったような顔をして表情を崩す。
そこに悔しさを覚えてレイはさらにつっかかるが、まことはのらりくらりとかわすだけ。

「もうっ」

何があっても教えてくれそうにないまことに、最終的にレイはあきらめるほかなかった。
これ以上ムキになるのも負けた気がするが、結局どうしたところで彼女には勝てないのではないか、という思いがよぎる。

「……あのさ、レイ」
「何よ」

――ありがと。

降ってきた言葉は本当に小声だったはずなのに、確かにレイの耳に届いた。
はっとまことの顔を見上げようとすると、ぐいと抱きすくめられて、その時初めて自分がまだ、まことに支えられたままだったということを思い出す。
そうだ、いつまでこうしているつもりなのだ。
それでも、彼女が離してくれる気配はない。
無理に腕から抜け出すのも違うような、ではどうすれば。

「んーとさ、その……よろしく、ってことで良い、のかな」
「……は」


それがまことの精一杯の返事である、とレイが気づいたのは、それから数秒後のことだった。


どうも…ご無沙汰過ぎて申し訳ないですひるめですorz
気づけば夏休み…世間は夏休みです←
なんかもう前回の展開すら覚えてないんじゃないかとかいろいろつっこみどころは満載ですが。
続き物の最後だけなかなか更新しないってどうなんだ自分。

私がネットから離れている間に公式の方でも動きがあったようですが、その辺はまたおいおい語る機会があれば語れたらなぁと思います。はい。

posted by ひるめ | 15:20 | まこレイ | comments(0) | trackbacks(0) |
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