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道行き
まこ亜美のようで、亜美まこのようで。
いろいろな転機で、手を引くのは亜美ちゃんの方な気がします。






今日はきっと忘れられない日になる。そんな予感があった。
それはたまごを割ってしまったからでもなければ、自転車のタイヤがパンクしてしまったからでもない。
予期せぬ雨に襲われたからでも、きっとない。
買い物に出かけようと自転車のスタンドを倒した時、何とも間の抜けた嫌な音がするのが聞こえた。
あ、とまことが思った時には自転車のタイヤは力なく地面にめり込んでいた。

「あー……」

一縷の望みを託してタイヤを掴んでみるが、抵抗はない。
今日は折角亜美が来てくれるという話だったのに、これでは。
急ぎ亜美にメールを打ち、来るのは少し遅くても大丈夫だという旨を伝える。
それでも彼女のことだ、きっといつものように早めにやってきて、本でも読んで待っているに違いない。
家にある材料でなんとかならないかと考えを巡らせてみたが、やはり二人分の夕食には足りそうになかった。
仕方ないと使い物にならなくなった自転車を引きずって、近所のスーパーに向かう。
少しでも亜美を待たせまいと、進める足は自然と速くなった。
スーパーで買い物を済ませても、自転車の修理はまだ終わらず、まことはじれったい思いでそれを待つことになった。
このまま帰宅してしまいたい程気持ちは逸っていたが、どう考えても修理を待って乗って帰った方が早い。
じりじりと座って待つ間、傘を持った人がちらほらと見え始め、外では雨がぱらついているのだと知る。
亜美が降られていなければ良いがと考えたあたりで、ようやくタイヤの修理が終わったと告げられる。
礼もそこそこに外に飛び出して初めて、思った以上に雨脚が強いことを知った。
しかし、今はそれに構っている余裕はなかった。


ばたばたと帰宅してみると、自分のものでない傘が玄関先に立てかけられていた。
待たせてしまったか、と急ぎ飛び込んだリビングにいたのは、見慣れた人影。
すやすやと眠るその姿に、思わず見惚れたのも一瞬だった。
緩んだ手から落ちた買い物袋がぐしゃりと音を上げ、まことははたと我に返る。

「あ、やば」

意外と大きな音に、起こしてしまったのではないかと亜美に目をやるが、幸い覚醒した様子はない。
ほっとしたと同時に、その眠りを見るとかなり疲れていることは明白だ。
そう思うと、胸が痛んだ。
少しでも亜美の負担を軽くしてあげられれば良いが、まことの頭ではそれもできそうにない。
せめて食事でもと思って誘ってはみたものの、まことの家に来るのでさえ負担になってはいないかと不安になる。
結局は、自己満足の押しつけではないか、と。
不意打ちで襲うネガティブな思考を振り払い、まことはそっと亜美の隣に腰を下ろす。
まだ来たばかりなのか、少し湿ったショートヘアから雨の匂いが香った。
それに誘われるように手を伸ばしかけて、その手をそっと下ろす。

「……ごめんね、晩御飯、すぐ作るよ」


急な誘いだったせいで、手の込んだものを作る余裕も時間もなかった。
それでも美味しいものを食べてほしくて、オムライスとサラダという無難な献立。
口をつけた亜美の表情が綻んだのを見て、まことはようやくほっとする。
雨の中を来させてしまった上に、待たせてしまった。
そのことを詫びれば、気にしないでと言うに決まっていたからあえて口にはしなかった。
体を気遣う言葉をかけてはみるものの、これくらいしかできないから、と返ってくるのも予想通りだった。
結局亜美は、周りが何と言おうと自分が思ったことを貫く。
実は、まことが思うよりずっと頑固なのかもしれない。
それを分かっているからこそ、まこともそれ以上踏み込むことはしない。

「紅茶でも、淹れようか」

ゆるりと頷く亜美。
食後のこのゆったり流れる時間がいつもは好きだった。
けれど、今日は。
気分を変えようと立ち上がったところで、テレビでもつければ良かったと後悔した。
どこか持て余した時間の中で、これ以上二人でいるのも耐えられない。
知らない間にあらぬ方向へ転がっていきそうな思考を抑え、紅茶を淹れる準備をする。
ちらりと盗み見ようとした亜美と目があって、どきりと跳ねる心臓。
ひたひたと零れ落ちていく飴色の液体を眺めながら、いつからこうなのだろうとふと思った。
亜美からの想いを伝えられ、戸惑いながらもその想いを受け取ったのが随分と前のようだった。
それからぎこちないながらも手をつなぎ、口づけを交わして。
不意に蘇りそうになった感覚。
ぶんぶんと頭を振ってそれを頭から追い出す。
今それを追いかけてしまえば、きっと口づけだけでは済まなくなる。

「はい、どうぞ」
「ありがとう」

そして訪れる沈黙。
自分の心音だけが響いているかのような錯覚に襲われ、ごくりと鳴る喉の音が生々しい。

「あ、えと……そろそろ、帰らなきゃだよね」

何か話題を、と探そうとして、亜美の背後にある時計が目に留まる。
亜美が振り返る瞬間に、髪の毛と襟の隙間から覗く肌がやけに白く目に映った。
ほんの一瞬の出来事が、まるで写真のように目の裏をちらつく。
それを振り払おうと出した声は、自分のものでないかのように熱を帯びていた。

「……そう、ね」

その色は、亜美に気づかれてしまっただろうか。
時計を眺めたまま動かない彼女の表情は読めず、何を考えているかも分からない。
その背中に不意に不安を覚え、振り向かせたくなるのを堪える。

「送っていくよ」

一言一言が、喉に引っかかる。

「……えぇ」

小さく頷く亜美の返事がいつになく曖昧だったのは、帰り難いからなのだろうか。
亜美と並んで歩く廊下が、永遠にも思えるほど長かった。
それは自分が亜美を帰したくないと思っているからなのか、それとも。

「また、明日ね」

明日になれば、学校でまた会える。
でも、学校での二人は、本当の意味での二人ではないから。

「――ッ」

呼び止めそうになった声を無理やり呑み込んで、まことは目を伏せる。
亜美に悟られてはならない。
じわりとまことを焼く、このみっともない感情を。

「まこちゃん?」
「えっ」

不意に亜美の手が触れ、欲望を抑え込もうと固く握られていたまことの拳が緩む。

「何か……あったの?」

こちらを見上げるその瞳、そして震える睫がちりちりとまことを煽る。
触れられた手から伝わる自分のものでない温度は、確実にまことの心音を速めた。

「違……うんだ」

ほら、早く帰らないと遅くなるし、と話題を逸らした。
ついでに目線も。
これ以上近づいては抑えられなくなる。
それなのに、亜美は離れてくれない――否、まこと自身も亜美を引き剥がすだけの理性はなかった。

「……答えて」
「いや、その」

掴まれたままの手は、確かな意思を持ってまことを無言のうちに問い詰める。
先ほど思ったばかりなのに、亜美の頑固さを忘れていた。
もういい、どうにだってなれ。

「……あたしはっ! 亜美ちゃんが思ってるほど、紳士的なんかじゃなくて、その……」

まことは意を決して口を開く。
それでも零れる言葉は切れ切れで、自分でも情けなくなるほど力ない。

「だから……今日はもう、帰ってよ……」
「私が帰ったところで……まこちゃんは、どうするの?」
「どうって……!」

そんなの亜美の知ったことではない、反射的に上げた顔の先で、亜美の視線に捕まった。

「なんで、そんな……」


――泣きそうな目を、しているの?


無言で腰に回される腕、一瞬おいて、抱き付かれたのだと頭が理解する。

「亜美ちゃん?!」

自分の言葉の意味が伝わっていなかったのだろうか、不安になって声を上げるまことを、抱き付く腕の力が押しとどめた。

「私、やっぱり帰らない」

今度はまことが戸惑う番だった。
亜美の言葉をそのまま捉えればそういう意味になるのだろうが、本当にそのまま受け止めて良いのだろうか。

「あ……え……?」
「……泊まっていって、良い?」

亜美の確かな声が、まことの背を押した。





どうも、ひるめです。
まこ亜美って告白するまではまこ亜美なんだけど、思いが通じてからは亜美ちゃんの方がグイグイ行きそうだなぁとふと。
続き…ですか…?
posted by ひるめ | 09:48 | まこ亜美 | comments(0) | trackbacks(0) |
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