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こんくらべ
誕生日おめでとう美奈(大遅刻
ということで美奈レイ。です。






「まこちゃああああんっ!!」
「うわっどうしたんだよ、美奈」

その日、いつも以上の勢いで現れた美奈子に、まことは思わず退いた。
美奈子がこんな様子の時は、厄介事もセットでやってくる。
思わず逃げようとしたまことだったが、一瞬遅かった。
有無を言わさず服をつかみ、引き留められたところでまことは大きくため息をついた。

「……あたし、こう見えても忙しいんだけど」
「いやいやいや! 話くらい聞いてくれたっていいじゃない!」

どうせこの後亜美ちゃんといちゃいちゃするだけなんでしょ、と指摘され、まことの頬が否応なく染まる。
事実放課後は亜美と約束がある。
美奈子が何をどう想像しているのかは知らないが二人の時間を過ごすことに変わりはない。

「あ、顔真っ赤」
「……うるさい」

茶化されることには慣れてきたと思っていたが、未だに素直に反応してしまうらしい自分の体が恨めしい。

「で? 話って何さ?」

照れ隠しからぶっきらぼうになるまことだったが、そんなことはお構いなしに美奈子は口を開く。

「何か大事な日が近づいてると思わない?」
「大事な日?」
「そう、年に一度の大事な日よ」

もったいぶってポーズまで決める美奈子だったが、まことにはぴんとこない。

「えーと……何かあったっけ……」

考え込むまことに、信じられない、と美奈子のオーバーなセリフが被さる。

「誕生日よ! た、ん、じょ、う、び!」

噛んで含めるように言われ、まことの脳内でやっとすべてがつながった。
なるほど、確かに美奈子の誕生日は数日後に控えている。
それに向けて、何かしてくれということなのだろう。

「そこでね、私考えたんだけど」

また無茶な誕生日プレゼントでも欲しいと言いだすのだろうか。
身構えるまことに、大丈夫よ、と手をひらひらさせる美奈子。

「ちょっと協力してほしいいことがあるだけよ」
「相談?」
「私ね……レイちゃんに、心からおめでとうって言われたいの」

極上の笑顔つきで!と拳を突き上げる美奈子。

「は?」

予想の斜め上を行く美奈子の言葉に、間抜けな声が漏れる。

「いつも私からだから、今回はレイちゃんから来るまで待ってみようと思うの!」
「待つって……」

いつもレイにべったりの美奈子に、そんなことができるのだろうか。
そんな疑問も浮かんだが、自信満々に言い放った美奈子にやめておけとも言えそうにない。

「で? あたしは何をしたら良いのさ?」
「いや、しばらくレイちゃんと離れるから! 伝言役を……」
「いや、それあたしに頼むことか?」
「親友のたっての頼みなのよ?」

助けてくれないの、と瞳を潤ませる美奈子。
それがフリだと分かっていても、まことには無視をすることなどできない。

「……分かったよ」

結局は、最後まで付き合うほかないらしい。
観念したようにつぶやくまことに、美奈子の顔がぱっと輝いた。

「じゃあ、お願いね!」

その後ろ姿に不吉な予感を覚えたが、まことには彼女を止める術などなかった。

まことに"協力"を求めた次の日。
レイからのアクションをまだかまだかと待ち望む美奈子だったが、彼女からの反応は一切ない。。
伝書鳩を頼んだまことに聞いてみても、何も聞いてないと。

「美奈、やっぱりこういうの、良くないと思うな」
「放っといてよ……こうなったら、絶対あっちから連絡させてみせるんだから」

目的が違ってきてないか、というまことの言葉をよそに、いつになく燃え上がる美奈子。

「どっちにしろ明日までの勝負なんだから、付き合ってよ」
「いや、だからさ……」

まことの窘める声も美奈子には届かない。
なんと言われようと、レイから行動を起こさせてみせる、その一点に美奈子の目標は定められていた。
しかしながら、美奈子が一方的に

やる気になったところで、レイにそれが伝播するわけでもない。
いつもと変わらない授業をだらだらとやり過ごし、放課後になっても美奈子の携帯はぴくりともせず、通信機も無反応。
何かよほどの事情や用事がない限り、レイがメールを寄越さないのは知っている。
それでも、二日まるまる連絡がないことに対して、レイは何も思わないのだろうか。
まことと亜美の二人と共に過ごすには心が荒みすぎていて、美奈子はやんわりと一緒に下校することを断った。
結果、うさぎは居残りで、まことと亜美は二人で帰宅。
取り残されたのは、美奈子一人。
真っ直ぐに帰宅するのも何故だか癪で、ふらふらと寄り道をしてはみたものの、陽が傾いてくるにつれてそれも空しくなってきた。

「……もうっ」

勢いに任せ、鞄を持った手を大きく振り上げる。
その時、何か質量を持った物体が、鞄から自由落下していった。
一瞬おいてがしゃりと嫌な音が耳に届き、しまったと地面に目をやれば携帯電話が無残な姿で転がっていた。

「ちょ、ヤバ」

焦り手に取った携帯電話は電源こそ入るものの、大きな傷がついてしまっている。

「あーもう!!」

どうせ待っていたってメールも電話もないだろう。
やけになった美奈子は、そのまま携帯電話の電源を落とす。

「……もう、知らない」

帰ったところで何も手につくとは思えなかった。
ゲームセンターに寄るということも考えたが、それも今はあまり楽しめなさそうだ。
それならば、いっそ帰ってそのまま寝てしまおうか。
たまにはそんな日だって、あっても良いだろう。


* * *


「……眠れない」
「そりゃ、あれだけ昼寝すればそうなるさ」

呆れたようなアルテミスの言葉も、今の美奈子にはどうでもよかった。

「君らしくないな。何があったんだい?」
「アルテミスには関係ない」

ばっさりと切り捨てられて絶句するアルテミスをよそに、美奈子はゆるりと体を起こす。

「ちょ、美奈、どこ行くのさ?」
「散歩」

どこへ、というアルテミスの問いさえ煩わしい。

「どこだっていいじゃない」

すぐ帰る、とだけ告げて、美奈子は部屋を後にする。
少しだけ乱舞に絞めたドアの向こうで、アルテミスが力なく呼び止めるのだけが聞こえた。
母親に気づかれないようこっそりと家を抜け出し、しばらく歩いてふと上を見る。
久々にきりりと冷えた大気に、降るような星空だった。
じわりと視界が歪みかけて、美奈子は慌ててそこから目を逸らす。
はぁ、とついたため息は、周囲を白く染めてそのままじわりと消え去っていく。
ようやく、少しだけ息ができた気がした。
レイからは結局何もなかった。
電話もメールも、訪ねてくることもなかった。

「……誕生日、なのにな」

別段、何か大層特別なことを望んだつもりはなかった。
ただ、ほんの少しだけ夢を見てみたかっただけだ。
それなのに。
適当に歩き、通り過ぎた公園ではカップルが暗がりでひと時の逢瀬を楽しんでいる。
あぁ、気づかなければよかった。
――期待など、しなければよかった。

「……あーぁ」

こんなことならと後悔してみてももう遅い。
ちっぽけな意地で起こした行動は、結局のところ自分を惨めにしただけだった。
レイは悪くない、と頭の片隅に残る冷静な部分が諭す。
その声をもっと早く受け入れていればよかったのだが、美奈子はそこまで大人になれなかった。
見上げた満月がちょうど頭上を過ぎようとしている。
もう、そんな時間か。

「レイちゃんの、ばか」

電信柱に小さな悪態を投げつける。
そろそろ、家に帰ろうかしら。

「馬鹿で悪かったわね」

しかし、誰にぶつかるはずもなかった小さなトゲは、しかし意外にも跳ね返ってきた。

「え」

予期していなかった反撃に、はっと振り返ると、そこに立っているのは一日中思い続けたその人の姿。

「……夢?」
「そんなわけないでしょう」

吐く息の白さが、地面を踏みしめるその足が、彼女が現実だと語っている。

「今何時だと思ってるの?」

馬鹿じゃないの?!と、いつになく強い口調に、美奈子は思わず身を怯ませる。

「何やってたのよ、こんなところで」
「何って」

散歩よ、という誤魔化しは、嘘、という彼女の一言に弾かれた。

「携帯も通じない、通信機にも出ない、家に電話したらアルテミスがあなたは不在だって」

こんな深夜に、と彼女の眉間の皺が一層深くなる。

「あー……」

そういえば、あの時勢いで携帯の電源を落としたままだった。
携帯の電源を入れると、しばらく鳴り響く通知音。
不在着信、受信メール、それらは全てレイからのもので、ようやくどれだけレイに心配をかけていたかを思い知る。

「レイちゃああああん」

ちょっと、と身を引く彼女に、それでも構わず抱きしめた。

「冷たいわね」
「誰かさんが夜中にほっつき歩くからでしょうが」

触れた頬は冷え切っていて、それはそのままレイが外にいた時間の長さを表しているようだった。
こんなに冷えるまで、こんなに遅くまで、心配してくれていたのだ。
じんとする美奈子の心中に水を差すかのように、腕時計が無機質な音を立てた。
それが合図だったかのように、先ほど鳴り止んだかと思った携帯がまた思い出したように震えだす。
それを開こうとした美奈子の手をレイが止めた。

「……え?」
「どうせ、うさぎたちからでしょう」

レイに言われて初めて、さっきまでの時間が昨日になったのだと気づいた。

「あぁ、そっか。日付が変わった瞬間にってことね」

こんな時間まで起きているなんて、仲間たちも律儀なものだ。
さっきまで誕生日というものにこだわっていたはずなのに、今この瞬間まで忘れていたことが可笑しい。
まあそれでも彼女たちからのメールが嬉しくないわけがない。
携帯を開こうとして、その手がゆるりと掴まれた。

「え、」

お互い冷え切った体温は、分け与えたところで冷えたままだ。
とすると、きっと寒いからなどという理由ではないのだろう。
レイの突然の行動に、美奈子は戸惑い顔を上げる。

「……今じゃなくて、良いでしょう」
「え、それって……」
「……くらい、最初に言わせなさいよ」
「聞こえない」

聞き返す美奈子に、こほんと一つ咳払い。
ひんやりとした風がレイの髪を巻き上げ、それは美奈子の背筋をぞくりとさせた。

「誕生日、おめでとう」

真っ直ぐ美奈子を映す瞳は、しかしすぐに逸らされる。
一瞬どこの女神かと思うほど妖艶なオーラを纏っていた彼女が、今はただの少女だった。
心なしか頬が染まっている気がするのは、外気のせいではない、そう思いたい。

「ん……ありがと」
「気が済んだら、さっさと家に戻るのね」

深夜徘徊なんて誕生日にやることじゃないわ、とレイ。
心配してくれているのか、ただの照れ隠しなのか分からないが、どっちでも良い。

「レイちゃんもね」
「ご心配どうも」

うさぎたちが誕生会を企画してくれているのだから、どうせ数時間後には顔を合わせるのになぜか離れがたかった。
そんな美奈子を察してか、仕方ないわねと最後にレイがくれたハグは、きっとどんな贈り物より言葉より大切だ。
また後で、とレイの温もりに名残惜しさを残しながらそっと別れる。
この一年も素敵な年になる。
レイと一緒なら、きっと。






お久しぶりですひるめです。美奈子よ、大遅刻でごめんね…。
というわけで美奈誕SSでした。
10月の後半には着手していたはずなのに、なぜかずるずる年の瀬まで持ち越してしまいましたorz
レイちゃんがデレた時の破壊力はすさまじいよなぁって思って書き始めたはずが、なかなかデレるところまで持っていけなくて難産でした…。
溜まってた諸々がひとまず片付いたので、溜めてたSSを少しずつ完成させていきたいなーと思っています。
posted by ひるめ | 17:00 | 美奈レイ | comments(0) | trackbacks(0) |
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