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ささくれ
どうも、書きかけのSS消化週間のひるめです。
次はまこ誕SSを完成させられたら…いいなぁ…。
なんだか珍しくすっきりしない感じのまこ亜美になりました…。






「や、いらっしゃい」

その声に迎えられて入った彼女の家は、いつもと空気が違っていた。
彼女しかいないはずの奥の部屋が、なぜだか今日はざわついているような。
もしかして美奈子かうさぎでも来ているのだろうかと思ったが、今日はそんな約束はしていなかったはずだ。

「……誰か、いるの?」
「あぁ、まあね」

ちょっと騒がしいかも知れないけどあがって、と招き入れられる。
ぱたんと扉が閉じると、さらに声が近くなった。
聞こえる声は甲高く、亜美よりはずっと年下の子どもの声のようだ。

「親戚の子なんだけど、ちょっと預かってくれないかって言われちゃってさ」

亜美ちゃんとの約束もあったんだけど、断り切れなくて、と頭を掻くまこと。
いいのよ、と亜美は笑う。
子どもは苦手ではないし、と言うと、まことがほっとしたように相好を崩した。

「よかった……あと、あたし今から買い物行かなきゃで」
「いいわよ、行ってらっしゃい」

すぐ帰る、と出て行った彼女の背中を見送り、亜美は一人まことの家にあがった。
誰かと会話をしているかのような声がリビングから響く。

「まこ姉ちゃん! ……じゃない」

リビングにいたのは
小さな人影。
ぱっと元気よく振り返るその腕には、小さな人形が抱かれていた。

「ごめんね、まこちゃんは今お買い物に行ってて」
「ふうん、じゃあお姉ちゃんはまこ姉ちゃんのトモダチ?」
「そうよ」

水野亜美です、と自己紹介すると、キノタイキです!と明るく返ってきた。

「タイキくん?」
「うん!」

にこにこと自分の名前を語る彼が、愛しの人と同じ苗字というのが不思議な気がした。

「何をしてたの?」
「んーとね、おままごと!」

おままごとという単語が、目の前の元気な少年から飛び出すとは思わなかった。
そのミスマッチに亜美が戸惑ったのも一瞬、

「あみ姉ちゃんは、お母さん役ね!」

彼の腕の中の人形からして、おそらくはその人形の母親役をやれということなのだろうと解釈する。
タイキくんは、と聞くと、お父さん役だよ、と返ってきた。

「ほら、お母さんがお仕事から帰ってきたよ」

今日はいつもより早いねえ、と微笑む顔がごっこ遊びには見えなかった。
まるで、普段からこんな会話を父親と交わしているようで。

「ただいま。今日は、お仕事早く終わったのよ」
「だって。嬉しいねえ」

心底嬉しげに言って、タイキは亜美を家の中という設定らしいカーペットの上に招き入れる。

「今日はお母さんが早く帰ってきたから、おやつでも作ろうか」
「おやつ?」

うん、と頷くその瞳は、期待に満ちて輝いていた。

「もしかして、今から?」
「だめ……?」

ねだるようなその表情は、まことのそれと少し似ている。
それだけのことに、ぐらりと揺れてしまった自分には気づかなかったことにして。

「じゃあ、作りましょうか」
「うん!!」

僕もお手伝いする、とキッチンへ走っていく小さな体を追いかけて、亜美もキッチンへ向かう。

「あみお姉ちゃん、何作るの?」

言いながら、自然と触れる体温。
子どもの体温は、大人のそれより少しだけ高い。

「何が良い? タイキくん」
「ボクはね、うーんと……」

少しだけ悩んで、何かを思いついたらしいその顔がぱっと晴れた。

「そうだ、ホットケーキ食べたい!」

ホットケーキ、という懐かしい響きの単語に亜美の気持ちが柔らかくなる。
いつぶりだろう、"ホットケーキ"を食べたのは。

「じゃあ、作りましょうか」
「ボク、卵割るね!」

張り切る彼の前にボウルを出して、ふとホットケーキミックスはあったかしらと思う。
まことが粉類を収めていたはずの棚を漁ってみると、さすが彼女のこと、まだ真新しいその袋は棚の奥に鎮座していた。
それをごそごそと取り出して、牛乳も量り、材料を机の上に並べる。
あとは混ぜて焼くだけ、これなら幼いタイキにもできるだろう。
そう思って亜美が目を離したその一瞬に、事件は起きた。

「あー……」

あ、と小さく声が上がって亜美が振り返った時にはもう遅かった。
タイキの服に綺麗に広がる黄色い染み。
途方に暮れて固まる彼に、亜美はとりあえずその手を引いて風呂場につれていく。

「エプロンはつけておきましょう。後で洗えばいいわ」
「あの、ボク……ごめんなさい」

すっかり萎れてしまった彼の頭を優しく撫で、亜美はそっと笑いかける。

「服、どうしよう」
「そうね……まことお姉ちゃんの、借りましょうか」

ちょっと待ってて、とタイキを残し、亜美はまことの部屋へと向かった。

「ターイキくん」
「あみ姉ちゃん……」

替えの服を取って戻ってみると、タイキはまだしゅんとしたまま風呂場にいた。

「ホットケーキ、だめになっちゃった」
「まだ大丈夫よ」

卵なら、まだ余分はあったはずだ。
しかしそれだけでは、今のタイキを慰めることは叶わなさそうで。

「じゃあ、魔法をかけましょうか」
「魔法??」

"魔法"という単語に、彼の瞳が一瞬で輝いた。
そうよ、という言葉と共に、亜美は記憶を頼りに冷蔵庫を漁る。

「あった……これを使うの」

亜美が手に取ったのは丸みを帯びたペットボトル。
炭酸水とラベルに書かれたそれは、ただの水のようでいて、実はいろいろと応用が利く。

「なあに、これ」
「ちょっとしゅわしゅわする魔法の水よ」

飲んでみる?とコップに少し注いで渡すと、タイキは素直にそれを口にする。
恐る恐るといった風に一口飲んだところで、眉に深い皺が寄った。

「本当だ、喉がヒリヒリする……」

こんなのいれて大丈夫、と本気で心配するタイキに、任せて、と胸を叩く亜美。
普段の自分を思えば多少大袈裟で芝居がかってはいるが、魔法を使うならそれくらいの演出は必要だ。
水の代わりに炭酸水。
たったそれだけのことで、出来上がりは全く異なるものになる。
ホットケーキをふんわりと焼く方法、それはかつて母に習ったものだ。
二度目に聞いたのはまことの口から。
母親と同じことを言う彼女に、懐かしさとくすぐったさを感じたのを思いだした。
手際よく粉と卵、炭酸水と牛乳を混ぜ合わせ、フライパンに流し込む。
軽快な音と共に、徐々に漂い始める良い香り。
それと共にタイキの表情も、不安げなものから期待に満ちたものへと変わっていく。
やがて出来上がったきつね色のホットケーキに、彼は素直に歓声を上げた。

「ねえ、食べて良い?」

その時、ピンポンと軽快な音がまことの帰宅を告げた。

「まこ姉ちゃんだ!」
「ちょうどいいわ、まことお姉ちゃんも一緒に食べましょうか」
「え、なんだい急に」

リビングに入るなり、状況が分からずまことは困ったように固まる。
慣れない呼び方にどぎまぎしたのは亜美だって一緒だった。
けれど、それを顔に出すのはなんだか面白くない。
ね、と亜美の目配せに、仕方ないなぁ、と顔を崩し、次にタイキを見た時、彼女の表情は優しいまことお姉ちゃんそのものになっていた。


* * *


結局少し多めに作ったと思っていたホットケーキはみんなで完食。
その後はまことも交じってにぎやかなままごとが繰り広げられた。
夕方になって迎えに来た母親に手を引かれ、名残惜しそうに帰っていくタイキとまた会おうね、と指切りまでして、一息ついた頃には亜美を心地よい疲労が包んでいた。

「ごめんね、付き合わせちゃって」
「ううん、大丈夫よ。楽しかったわ」

タイキくんも可愛かったし、と付け足すと、そうだろ、と笑う彼女の顔はどこか母親のようで。
それに胸の奥が鈍く疼き、ふと胸に手をあてる。
先ほどの会話の、どこにささくれだつ理由があったのか、自分でもよく分からない。

「賑やかなのもたまには良いね。あたし、なかなかそういう機会なかったから」

楽しかった余韻を味わうようなその横顔に、ふと亜美は納得する。
タイキといる時のまことは、亜美の知っているまことではなかったのだ。
彼女には、子どもといるのがよく似合う。
そういえば、彼女の夢は。

「……亜美ちゃん? どうしたんだい」

ささくれの正体に気づいたは良いが、それは気づきたくない代物だった。

「なんでも、ないわ」
「本当に?」

ただの問いかけよりは少しだけ強い語調で、それに僅かであっても反応してしまう自分の体が恨めしい。
もっと嘘をつくのが上手くなりたいと思った。

「もしかして、タイキが何か」
「タイキくんは、関係ないの」

未来を考えると、不安になるとは言えなかった。
そんな思いをぶつけたところで、まことは困るだけだろう。
そして、困ったように彼女が返すであろう言葉を聞くのも怖かった。

「じゃあ、何さ」
「ううん、なんでもない……大丈夫よ」

楽しかったと言う彼女の気分を壊したくはなかった。
亜美に答える気がないことを悟ったのか、そう、とまことがそれ以上深追いしてくることもなかった。
それでいい、今はまだ、それでいい。
明確な答えを聞くには、今夜は幸せすぎた。
じわりと浸食してくる嫌な考えを振り払うかのように、亜美は紅茶を一口ごくりと飲み干した。






どうもひるめです。
ずっと書きかけでもやもやしていたのですが結局もやもやのまま出すことに←
なんだか続きそうな雰囲気ですね。続くんでしょうか。分かりません。
posted by ひるめ | 23:44 | まこ亜美 | comments(0) | trackbacks(0) |
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