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fib
まこちゃん誕生日おめでとう…!!(約1カ月遅れ)
お互い意識し始めの初々しい感じのまこ亜美、ということで一つ。





白菜のかさがこんなに減るものだとは、初めて知った。
意外と肉は早めに鍋に入れて煮込むもので、逆に早すぎた玉ねぎは気づけば溶けかけていて。
今日は晩御飯いらないわ、と言う亜美に、本当に、と繰り返し確認する母親の顔が不意に浮かんで、今更ながら可笑しさがこみ上げた。
大丈夫よ、と言った割に一つ一つの野菜の下ごしらえをするのにも時間がかかり、簡単なものを選んでおいてよかった、と思う。
母からしてみれば、亜美の突然の思いつき程度にしか考えていないであろう。
しかし今日のことは亜美なりに入念に考えた上でのことだった。
母の夜勤と塾の休日……そしてあの人の誕生日が近い日を選び、慣れない買い物をして。
揺らぎそうになる決意を押し止めるように蓋を閉め、あとは煮えるのを待つのみ。

彼女の誕生日を知ったのは、ほんの些細なきっかけだった。
亜美が自分から聞いたわけではない、ただ、うさぎとまことが話しているのが聞こえてきただけ。
盗み聞きではない、聞こえてきただけ、だ。

「あれ、まこちゃんの誕生日ってもうすぐじゃん!」
「実はね」

ははは、と照れたように笑うまこと。
誕生会やろうよ、と意気込むうさぎに、彼女も満更ではなさそうだった。
何の話からそこに発展したのか分からないが、軽々と壁を越えていくうさぎが素直に羨ましかった。

「じゃあ、また日曜に」

元気よく去っていく姿を追って、目を細めるまこと。
彼女の目が映す先に覚えたじりじりとした感情の名を、亜美は知らない。

「……うさぎちゃん、相変わらずね」

どう話しかけようか一瞬迷って、結局出てきた言葉はいつもと変わらなかった。

「そうだね。見てて元気になるよ」

ご丁寧に誕生会の話をしてたんだ、などと教えてくれて、まさか聞いていたとも言えない亜美は曖昧にそれを受け流す。
きっとうさぎからお声はかかるだろうし、それに便乗して誕生日を祝えるのなら問題はない――ないはずだ。

「亜美ちゃんも、来るんだろ?」
「えぇ、そのつもりだけど」

よかった、と零された言葉が、どういう意味なのか問う勇気はなかった。
日曜日にも祝うのだということを知っていて、それなのに、しかも前倒しで祝うなど迷惑にはならないだろうか。
鍋を混ぜながら悪い方向に考えそうになる自分を振り払い、亜美はよし、と息をつく。
あとはそうだ、彼女に電話をかければ良いだけ……のはずだったのだが。
受話器をとってボタンを押すだけのことが、こんなに困難だとは知らなかった。
指先までどくどくと脈打ち、そこだけ別の生き物になってしまったかのようだった。
それでもやっとの思いでボタンを押し、発信ボタンを押したところで鳴り響く発信音。
不意に、もう後戻りはできないのだと実感した。

「はい、木野です」

数回のコールの後、耳慣れた声が亜美の胸を跳ねさせた。
思わず取り落としそうになった受話器をなんとか支え、亜美はなんとか応答する。

「もしもし、まこちゃん?」
「あー、亜美ちゃん?」
「え、あ、そう、水野……です」

名乗っていないことに気づき慌てて言い直す。
どうしたのさ、と柔らかく促され、亜美はなけなしの勇気を振り絞る。

「その……晩御飯って、もう食べちゃった?」
「え? いや、まだだけど……どうしたんだい?」

当たり前だ、まだ食べてないであろう時間を狙ってかけているのだから。
それでもまことの返答にほっとして、言葉を続けた。

「晩御飯、母が夜勤なの忘れて、作りすぎちゃって」

見え透いた嘘。
そもそも夜勤ならば、普段はちゃんと晩御飯を用意しておいてくれる。
それを必要ないと言ったのは、亜美の方だった。

「良かったら……食べに来ないかなって」

駄目なら美那子ちゃんにでも声をかけるわ、と彼女に選択肢を与えるあたり、自分も随分とずるくなったものだと思う。
これなら、断られても傷つきはしない。
……その選択肢を与えたのは自分で、選んだのは彼女だからと言い訳ができる。

「じゃあ、お邪魔しようかな」

半分断られることを覚悟していた亜美は、呆気ないまことの返答に戸惑った。

「あの……ただの、お鍋なんだけど」

声が震え、これは現実かと頬をつねりたくなるのを必死で抑えた。

「いいよ、すぐ行く」
「あ、うん……待ってるわね」

軽い音を立てて通信が切れた瞬間、亜美に現実が押し寄せてくる。
途方もなく難しいことのように思えていたことが、こうも簡単に達成できてしまうとは。
それからまことが来るまでの間は、永遠にも感じるほど長かった。
ほどなくして、やってきたまことをソファに案内する。
迷わなかった、寒くない、と口だけは達者に動くが、脳がついていかない。
彼女が見慣れた自分の部屋にいるということが、ひどく不思議なことに思えて、やはりこれは夢ではないかとどこかで疑う。
それでもきちんとお茶をだし、皿をだし、何食わぬ顔でまことの隣に座った自分を、褒めてあげたいと素直に思った。

「いいよね、こういうの」

あちち、と鍋を口に運び、満足そうに頬張るまこと。
おいしい、との一言に、ようやく亜美も安心して箸をつける。

「独りだとさ、なかなかやらないから」

大人数でご飯食べるのに憧れがあってさ。
まことの言葉には、亜美も同感だった。
うさぎたちと共に過ごすようになり、たまに一緒に食事をするようになり、食すという行為がこんなにも楽しいことだということを初めて知ったのだ。
しばし黙々と箸を動かし、食器が触れ合う微かな音だけが響く。
自分と違うテンポで生きる他人がいるという、当たり前の事実がふと愛おしくなる。

「まこちゃんって、ファンも多そう」
「え、そうかな。照れるね、そういうの」

そこで、声かけてくれれば良いのになあ、なんて言える彼女はやはりしなやかで強い。

「でも、亜美ちゃんもファンいそうだけど」
「わ、私は! そんな……きっと、いないわ」


ファンなどというものがいたところで、まことのように受け入れるような優しさも強さも亜美にはない。
きっといない、という言葉をどう受け止めたのか分からないが、まことは朝と同じように、よかったとつぶやく。
その真意が読めず、またぐらりと転がりかけた思考を何とか押しとどめる。
話題を変えなければ、鈍った頭をなんとか回転させ、ふと一番言わなければならないことを忘れていることに気づく。

「あ、の」
「ん?」
「誕生日、おめでとう」

ちょっと早いんだけど、というのは心の中で付け足して。

「え、あぁ!」

少しの間の後、ようやく合点がいったようにまことの顔がぱっと晴れる。
とびきりの笑顔、その一言だけで報われた気がした。
それが誰にも等しく向けられるものだとしても……構わない。

「へへ、そうか……なんだかうれしいな」

緩みきった微笑みを浮かべるまこと。
彼女の反応がうれしい反面、それだけではない感情も垣間見えたように思ったが、きっと気のせいだろう。

「……ありがと。ごちそうさま」

その言葉は、自身の感情に捕らわれていた亜美をはっと我に返した。

「あ、うん、また――」
「また、誘ってほしいな」

呼んでもいい、という亜美の言葉は、まことの言葉にかき消された。
もちろん、と答えるのがやっとで、言った後で変なことを言わなかったかと不安になる。
まことはまことで何がおかしかったのか分からないが、一人くすくすと笑っている。

「え、え」
「あぁ、うん、ごめん。気にしないで」

何を気にしなくて良いのか、きょとんとする亜美。
その間にもまことは手際よく片づけを済ませ、帰り支度まで済ませていて、亜美は慌てて玄関まで彼女を送る。
もうちょっとゆっくりしていけば良いのに、というわがままな思いは言葉にできそうにない。
そう、この気持ちは一方的な憧れ。
一時的な独占欲に過ぎない。
じゃあ、とまことが扉の向こうへ消えていく。
亜美はそっとその扉に鍵を閉めた。






どうもひるめです。
1カ月近く遅刻してしまいましたがまこちゃん誕生日おめでとうということで……と言いつつあまりハッピーな内容になってないような気もしますが……
自分の思う"好き"と他人の思う"好き"が本当に同じかどうか、分からなくて不安で臆病になるのは亜美ちゃんの方かなぁ、と勝手に思いながら。
posted by ひるめ | 18:12 | まこ亜美 | comments(0) | trackbacks(0) |
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