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Prism
どうもひるめです。
「まこ亜美でお外デート」というお題をいただいたので、一つ。






現実は案外うまくいかないものだ。
待たせている亜美を思いながら、まことは一人嘆息する。
昨日から降り続いた雨も今朝にはすっかりやんでいて、もう降ることはないだろうと思ったのが間違いだった。
不安定ながらも曇天を保っていたのも午前中まで。
とうとうぽつぽつと降り始めた雨に、二人は慌てて屋内へと避難した。
聞けば亜美も珍しく傘を持参しておらず、こんなこともあるんだねなどと二人で笑い合う。
そんなことをしている間に、雨は濡れていこうなどと言えるほど穏やかなものでもなくなっていて。
結局、一本ずつ傘を買うことにした。

「お待たせ」

先ほどまで二人でいたファミレスの出口で、まことの姿を認めた人影が手を振る。

「ごめんなさい、買いに行かせてしまって」

濡れたでしょう、と言いながら、そっとまことの身体を拭く亜美。
それに対して、大丈夫だよ、と口では言うが、嬉しくないはずがない。
こんな些細なことでもとくんと跳ねる心臓。
安物のビニール傘でごめんね、と関係ない言葉で誤魔化す。

「どうしようか、この後」
「そうね……」

まことの問いに、亜美は口元に手を当てしばし考え込む。
その視線がちら、と傘に移動し、そしてまことの視線と出会った。

「このまま、歩きましょう?」
「え、でも」

本屋とかでもいいのに、と言いかけて、まことはそれをそっとしまった。
亜美があまりに楽しそうに、買ってきたばかりの傘を開くものだから。
まこともそれに合わせて傘を開く。
亜美が何を思ったかは知らないが、楽しそうならそれで良い。
ぱしゃぱしゃと小さな飛沫を上げて、二人のリズムが重なった。
いつもより僅かに速いテンポに、まことも合わせて歩く。

「あ、」

亜美が何かに目を留め、ふと立ち止まる。
軽くぶつかる傘と傘から、ぱらりと滴がこぼれた。

「どうしたんだい?」
「ここって、前まこちゃんが案内してくれた商店街?」
「あぁ、確かに……」

雨に濡れ、色彩が変わるだけでそこはまるで別の町に見えた。

「寄ってく?」

まことが聞く前に、当の本人は誘われるように歩き始めていた。
濡れた植え込みがキラキラと緑を反射し、普段よりも生気を放っているようで。
元気そうだね、とまことは誰にともなく思った。
濡れないようにと収められた花屋の花を目の端に流し、おいでと誘う和菓子屋を過ぎ、亜美がぽつりとつぶやく。

「音が、する」
「……音?」

言うなり亜美のテンポが速まり、まこともそれにつられて歩き出す。
まことの耳ではとらえられなかったが、亜美には確かに聞こえたらしい。
数歩だけ先を行く背中を追いかけ、やがて亜美が止まったのは、こじんまりとした雑貨屋の前。
その店先にかけられた風鈴が、ちりんと音を生んでいた。

「珍しいね、この時期に」

季節外れの風鈴は、しかし違和感なくそこに収まっている。
時折吹く風がそれを揺らし、気まぐれに通り過ぎていった。
その様子に、心を奪われたかのように見入る亜美。
ちらりと目を移せば、店内にはガラス細工らしきものも光っている。

「中、入ってみようか」

まことの問いに、亜美もこくりと頷いた。
ガラスで作られた置物、個性的な形をしたグラス、中でも目を引いたのは、手のひらサイズの万華鏡。
それを覗いて小さく感嘆の声を上げる亜美に目を細めていると、まこちゃんも、とそれを差し出される。
ありがたく受け取って覗くと、まばゆい世界が弾けた。
青と緑が、赤と橙が、ぶつかりあい混ざり合う。

「わあ……!」

これは亜美が声を上げるのも無理はない。
踊る色彩の中で、不意に不思議だと思った。
ただの鏡とビーズの塊に、どうしてこうも胸が躍るのか。
その後も店内を少しだけ見て回ったのだが、万華鏡以上に心惹かれるものは見つからなかった。
その万華鏡も、まことの手に収めてしまうにはあまりに勿体ないと購入は見送った。
また来ましょう、と亜美が言う。
あぁ、それも悪くない。
店を出る頃にはすっかり日が暮れていて、夜がそっと降りてきていた。
傘をさして数歩歩いたところで、まことはふと気づく。
いつの間にかソフトになっている、ビニール傘の音。
顔を上げると、傘にぶつかり、ぱらりと消えていく白。

「亜美ちゃん、雪……」

ほら、とまことの指に導かれ、亜美の瞳が空を映す。
綺麗、と零れた、その音に心を奪われた。
世界は相変わらずざわざわと音に溢れているのに、彼女だけがまことの世界に波紋を作っていく。
しばし白い結晶に見とれていた二人の沈黙を、ばさりと乾いた音が崩した。
亜美の手から滑り落ちたビニール傘が、ふわりと揺れて転がる。
どこからかやってきた光が、回転に合わせてきらきらと揺れた。

「妖精、みたい」

言った後で、はっと染まる頬。

「あ、えっと、さっきのは……!」

聞こえた?と小さく尋ねる姿が、どうしようもなく眩しく見えた。
亜美をそっと腕に収め、まことはその深い青と向き合う。
その瞳が、自分が映していることが、たまらなく不思議で、そして嬉しかった。

「……亜美ちゃん」
「まこちゃん、ここ……外」

ぐっと抱きしめるまことに、戸惑うように亜美の言葉が切れ切れに落ちる。
それでも言葉以上の拒絶はなく、まことはそれを都合よく解釈することにした。
今何を見ているのだろう、今何を感じているのだろう。
彼女の視界を、思考を、考えていること全てを知りたいと思った。
そんなことができたら、どれほど世界は輝くのだろう。
その瞳を通して見る、世界は。
亜美の髪の毛に、結晶が絡むのが見えた。
自分の手に、触れて溶けていく結晶が見えた。

「傍に、いてよ」

思わず漏れた言葉に、応じるように背中に回される手。
その温もりに、やっと少しだけ安堵する。
くすりと笑って、ここにいるわと彼女が言った。






どうもひるめです。
寒いですね!冬だから当たり前ではありますが、それにしたって寒い。
そして何より悲しいのが、まだ今シーズン雪を見てないことです。
一回くらい雪、見たいなぁ……。

「お外デート」というお題をもらったは良いものの、ものすごく難産でした。
デートと言ってもどこか決めて歩くということをあまりしない人なので…そしてなんだか雨が好きらしい私…今度はからっと晴れた話でも書きたいですねヽ(´ー`)ノ
posted by ひるめ | 15:12 | まこ亜美 | comments(2) | trackbacks(0) |
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コメント
>たまさん

ずっとコメントに気づいてませんでしたすみません(汗
亜美ちゃんってわりと感受性豊かですよね、と考えていたらふと妖精みたい、とつぶやく亜美ちゃんが浮かんでいました。
大好きと言っていただける、その言葉だけでとてもうれしいです(*'▽')
ありがとうございました。
2014/01/22 02:54 by ひるめ
こんばんは〜

とってもとっても綺麗で素敵なお外デートありがとぉ!(*/ω\*)
ひるめちゃんのお話は本当にキラキラで凄くロマンチックで可愛くって大好きです!!
感想下手で在り来たりな言葉しか言えなくて申し訳ないです…でもでも、とても大好きです!
ありがとうございました!(*´∀`*)
2014/01/14 20:15 by 榎木たま
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