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tres
どうも寝起きは体温低めで動けないひるめです。
お題
「ダンス パートナー変えてという声
離れて踊り続けてパートナーはかわるがわる
そうして、いつかあなたに戻る
その時は二度とパートナーを変えたりしない」
というのをいただいたので一つ。
(これ本文よりお題の方がずっと素敵なんじゃ…っ)
モニターの上で、二つの小さな点が明滅していた。
緩慢な動作で閉じた瞼に、並ぶ緑と赤が焼き付いた。
泣くことは許されない、贖罪を乞うことも許されない。
その目で、見届けなければ。
それが、ここに残された自分の使命。
もうだめなの、と歯噛みするヴィーナスの独り言が、確実に空気を強張らせていく。
まだ、と悪あがきのように吐いたところでどうにもならなかった。
モニター上で、緑色が弾けて消える。
花火のようだ、と場違いなことを思った。
花火など目にしたこともないが、それがあまりにも綺麗だったから。
ヴィーナスの拳が、機械を壊さんばかりに叩き付けられる。
その音が、マーキュリーを責めるように響いて落ちた。
 
* * *

また何か別のこと考えてただろうと、彼女が少しだけ呆れた顔をする。
別のことを考えていた、それ自体は間違っていない。
けれど、それは決して笑えるような内容ではなかった。
自分の名を呼んで、柔らかく微笑む彼女が目の前にいることが、ひどく不思議だった。
まこちゃんと確かめるように名を呼んで、彼女がその声で、どうしたのと言うのが耳に響いた。
指令室は二人でいるには広すぎて、身を寄せ合ったところで寂しいだけだと思った。
帰りましょうとその指を掴み、不思議な顔をしたまことが、いいよと応えるように指を絡める。
晩御飯どうしようか、などと呑気な話題を振られ、思わずくすりとしてしまった。
彼女の食べたいものでと言えば、また困らせてしまうだろうか。
それでもいくつか候補をあげ、あれやこれやと提案してくれる。
あくまで選択権を亜美に与えてくれるのは優しさで。
まことはいつでも、亜美の選んだ答えに、いいよと笑ってくれるのだ。
 
* * *

なんだそんなことか、と彼女は言った。
その言葉尻が震えたのに、気づかなければよかったと思った。
どんなに考えても、あらゆるルートを辿っても、最悪のシナリオからは逃れられない。
最悪でもあたしが死ぬだけなんだろ?という問いかけが、これは現実だと告げる。
戦士としての使命を帯びているからとは言え、覚悟なんてそうそうできるものではないだろう。
これはそう、死刑宣告と同じようなものだった。
皮肉なもんだな、というつぶやきが聞こえた。
あれだけ彼女が――いや、きっと月に住む人は皆――焦がれた星に、まさか牙を剥かれるなど。
ジュピター、と音の乗らない声が零れ、吐息だけがマーキュリーの耳に響いた。
マーズもいるんだ、大丈夫さ、と、彼女がまた、根拠のない"大丈夫さ"を上乗せしていく。
彼女の最後の優しい嘘を、もしくは強がりを、暴くことなどできなかった。
その背中を、どんな顔をして見送ったか、もう覚えていない。
 
* * *

忘れるという便利な機能は、都合よく忘れたいものを忘れさせてはくれないらしい。
寝ざめの悪い夢を見て、いつもより少しだけ早い覚醒。
カーテンの向こう、じんわりと拡散された光は、まだ朝というには弱々しい。
ぞわりと背筋を寒気が這い上がり、亜美は思わず身を縮めた。
寝起きは体温低いよね、とまことに言われたことがある。
確かに、彼女の言葉通りだと思った。
軽く動かそうとした指先さえ、強張って言うことを聞いてくれない。
だんだんと明瞭になる視界で、彼女が隣にいることを認めて。
その頬に手を伸ばし、体温に安堵した。
触れた後で起こしはしなかったかと不安になったが、聞こえてくるのは穏やかな寝息。
その安らかな横顔は聖母のようで、思わず視線を逸らした。
ごろりと寝返りを打ったところで、不意に喉が渇いていることに気づいた。
 
* * *

記憶の中のヴィーナスは、いつだって余裕の表情を浮かべていた。
なんて顔してるのよ、と言ったその時も。
そんなことを言われても。
どう戦術を組み立てたところで、敵わないことは分かりきっていた。
その上で、穏やかな顔などしていられるわけがない。
しかし彼女は、見くびらないでと自信満々ともいえる態度で言い放つのだ。
あなたと私の出す答えが、一緒だとは限らないでしょう?、と。
でも、最大公約数で解を出すことなどできないのよ……分かっているでしょう?
そう言いたいのをそっと胸に収め、代わりにさすがねと口にした。
何か言いたげにヴィーナスの唇が揺れたが、それは言葉にならなかった。
ほら、あなただってよく分かっているんじゃないの。
その言葉をぶつけたところで、もう意味はない。
 
* * *

冷蔵庫を開けたところで、あ、と呆けた声が洩れた。
買い物行くの忘れてたや、と頭を掻きながら、身支度をするまこと。
ちょっとだけ留守番を、と頼まれて、作ってもらう側なのに、というやりとりももう何度繰り返したことか。
結局は彼女の方が買い物は上手いし、手慣れている。
そんな風に説き伏せられて、亜美はしぶしぶ留守番をする羽目になる。
早く帰ってくるからと扉を開けるまことの姿に、その時何かがフラッシュバックした。

――待って

その言葉はきっと、マーキュリーが最も言いたくて――言えなかった言葉。
きょとんとした顔で、まことが振り返る。
ただそれだけのことに、何故涙が落ちたのだろう。
 
* * *

嫌な夢を見たの、と言うマーズの言葉は嘘ではないだろう。
でも本当でもないわね、とマーキュリーはキーボードを叩く。
モニターの向こうで、シミュレーションの中の緑がまた散った。
どう戦力を配置したところで、力不足なのは明らかだった。
状況はどう、聞くまでもないでしょう、そんな中身のない会話が繰り返される。
それを分かっていて、それでも言葉を紡ぐことをやめられない。
沈黙が訪れてしまえば、頭の中に描かれた行く末を認めてしまうようで。
マーズとて馬鹿ではない、聡い彼女のことだ、きっと予知夢でも見たのだろう。
それを信じたくないのか、嫌な夢だったわ、と零す横顔はまだまだ子どものようだった。
目の前で、緑が弾け飛ぶ。
もう、何度繰り返しただろう。
そこでマーキュリーは、思考を止めた。
 
* * *

冷たい水が喉を滑り落ち、亜美はようやく息をつく。
まだ台所に微かに漂う夕食の残り香が、不意に亜美の記憶をくすぐった。
力強く抱きしめられた、その腕の強さがまだ腕に残っている。
やっぱり何かあったのかい、という問いかけには、答えなかった。
まことがその沈黙から何を読み取ったかはしらない。
ただ、気づいた時には思わぬ力で引き寄せられていた。
大丈夫、絶対傍にいる。
亜美ちゃんのこと、置いていきやしないさ。
どこに根拠が、とマーキュリーなら切り捨てただろうか。
もう一口、冷水を口に含む。
この世界に、"絶対"など存在しないことを知っている。
だが今だけは、それに縋っていたいと思った。






どうもひるめです。
なんだか最近情緒不安定水野さんなまこ亜美しか書いてないような気がしてきました…。
(ちなみに次回も薄暗い予定…なんて言えない…。)
posted by ひるめ | 03:20 | まこ亜美 | comments(0) | trackbacks(0) |
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