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The charm
美奈レイ(実写)でバレンタイン(2時間遅れ






滅多なことではつけないテレビを、今日は彼女が出るからというそれだけの理由でつけっぱなしにしていた。
バレンタインの特集に出るからと、一方的に日付と番組名だけを告げるメール。
見てほしいとも見てくれるなとも特に書いておらず、それはただただ事務的だった。
それでもメールの向こうの彼女は、レイが番組を見ることを確信しているだろう。
そしてレイもまた、少し物寂しいからとか理由にならない理由でテレビの電源を入れる。
都心の百貨店で、大人なバレンタインなどと言いながら紹介されるチョコレートの数々。
その銘柄に見覚えがあるのは、父親がたまに贈ってくるからだ。
つまりは、そのクラスの銘柄であるということであり、一般人が手を出すには少し背伸びをしなければならないだろう。
それも、本命ならば構わないということか。

「……嘘ばっかり」

猥雑なトーンで番組は進行していた。
にこやかにリポートを行う画面の中の"愛野美奈子"に、訳もなく苛立ちを覚えた。
同時に、レイの目の前に積み重なった色とりどりの包装が主張してくる。
どんな言葉を飾りたてたところで、結局は一方的な自己満足以外に何の理由があるのだろう。
きれいごとに包まれて、一皮剥けば決してきれいとは言えない感情がそこに折り重なっていた。
タレントの顔をした彼女が、無難な感想を述べていく。
「男の心を掴むには」なんて空々しいアドヴァイスが、するするとその口から出てくる。
見ていられない、とリモコンに手を伸ばしかけた、ちょうどその時だった。

「あら、ちゃんと見てくれてるのね」
「な……」

はぁい、と手をひらひらと振って、彼女はいつも通り憎らしいほど余裕の笑みでそこにいた。
いい加減、玄関から入ってくることを覚えてくれないだろうか。
そう言ってみたところで、結局のところ屁理屈をこねられて終わるのが関の山。

「……仕事は?」
「終わったわよ。こう見えても、プロだもの」

そんなことを言いに来たのだろうか、きっと違う。
そう思いたいのに、彼女は明確な否定をくれない。
会いに来たのという、その一言が欲しいのに。
テレビの中で男性アナウンサーが、当たり障りないコメントを吐いてコーナーが終わった。
やけに陽気な音楽と共に、今度はファッションがどうのと特集が始まって、ふとばからしくなった。
目の前の押しつけがましい塊も、同じくらいにばからしい。

「マーズったら、人気者ね」

その山は彼女の目にどう映ったのだろう。

「どうせ理想の王子様の代わりにされてるだけよ」

吐き捨てるように言って、レイは今日押し付けられそうになった数を思う。
どうせもらったところで一人では消費しきれない。
かといってうさぎたちに配るわけにもいかず、結局申し訳ないことをしてしまうだろうからと全て断った。
それでも勝手に下駄箱に突っ込んでいく者も一定数はいるようで、仕方なくそれだけは回収して帰ることにした。
その結果が今机の上に山になっているわけだが、開けて食べようという気にもなれないのが現状だった。

「マーズってどこまでも冷たいのね」

くすくすという笑いに乗せられた言葉に、不思議と腹は立たなかった。
冷たいと言われたところで、その自覚はあるから傷つきはしない。
それ以外の何者にもなれないという自覚もあった。

「どこかの誰かさんは、さぞたくさんもらったんでしょうね」
「仕事上もらうだけよ。お互い義理だもの」

私だって贈るしね、と語るその唇には、まだほんのりと紅が残る。
仕事帰りとはそういうことだ、彼女からはいつも背伸びをしすぎた香水の匂いがした。

「でも、ファンからももらうでしょう?」
「何、妬いてるの?」
「そういうわけじゃ」

違う、と言えば嘘だった。
レイは嘘を吐くのが下手で、美奈子は本当を見抜くのが得意だ。
今も、彼女はくつりとその嘘を暴いてしまう。

「わざわざ私が来たんだもの、察しはついてると思ってたんだけど」
「何がよ」

これ、と彼女のポケットから、小さな袋が現れた。
テレビの向こうの彼女が紹介していたそれとは程遠い、安っぽいピンクの不織布が揺れる。
現実の彼女はこんなものだ、と世間を一笑してやりたくなるほどに。

「何か予想はつく?」
「……大体」
「そう。じゃあ、はい」

軽く放られたそれは、綺麗な放物線を描いてレイの手に着地した。
両手で大事そうに渡されなくて良かったと、不意に思った。

「開けてみて」
「……今?」

包みを開けた後、表情を変えないでいる自信がなかった。
しかしやんわりとした抵抗は、強気な彼女の瞳の前に溶けて消える。

「トリュフ?」
「えぇ。どうせ、甘いのは苦手でしょ?」

だからビターチョコよ、という彼女の言葉通り、一つ口に運んだそれは微かな苦みを残してあっさりと崩れた。
ただ、微かな粘り気だけが嚥下するのに引っかかった。

「どう?」
「美味しい、わ」
「あら、素直ね」

美奈子は満足気に目を細め、レイの手元に手をのばす。
その指が自作だという歪んだ球体を拾い上げ、それを口に放り込んだ。

「ファンの子から受け取るのは、既製品だけね」

彼女が味を確かめるように舌で転がし、こくりと喉を動すのを見ていた。
そのせいで、話題が変わったことに気づくのに少しだけ遅れた。

「既製品?」

確かめるように問い返し、そ、と彼女が首肯する。
少し意外だった。
彼女の性格なら、というより世間が求める彼女なら、どんな形のものでも受け入れるのかと思っていた。
それがたとえ手作りの歪な片想いであっても。
しかし、彼女があっけらかんと話した理由は、もっと現実的だった。

「そう。仕方ないわね、手作りは何が入っているか分からないし」

あぁそうか、と納得する。
同時に、彼女が"全国的アイドルの愛野美奈子"であることを再認する。
友だち同士の交換ではないのだ、何があってもおかしくはない。

「自分の一部を入れるっていうのが、最近流行ってるらしくてね」
「一部?」
「そ。血液とか、毛とか?」

惚れさせるためのおまじないのようなもの、それは呪いの間違いではないか。
軽い調子で並べ立てられた物は、笑えるような代物ではなかった。
途端に、口の中でどろりと溶ける甘さが、舌を痺れさせるような感覚に変わる。

「……な、にを」
「なんて顔してるのよ、マーズったら」

信じられない、というレイの反応を楽しむかのような様子に今だけは安堵した。
常識的に考えれば、美奈子がそんなことをする理由は何もないはずだ。
けれど、当の美奈子は意味ありげに微笑みを浮かべるばかり。
やはり彼女は、肝心なところで否定をくれない。

「血液なんて入ってないわ、当たり前でしょう?」
「それ、信用できな――」

やられたと思った時にはいつだってもう遅い。
唐突な口づけは、二人の間でぬるりと滑った。
先ほどのチョコレート、あるいは何か別のもの。
鼻を抜ける化粧の匂いは、不思議と嫌ではなかった。
角度を変えてもう一度、と触れてくる唇に今度はきちんと応じる。
ビターチョコよ、と笑う彼女の声が耳の奥でリフレインした。
口の中で溶けるそれは、吐きそうなほどに甘い。
血液など入っていなくとも、レイを麻痺させるには十分だった。
頭の片隅で、嘘ばっかり、とレイは呟いた。






どうもひるめです。
バレンタインは見事に遅刻です(ドーン
今回は厳正なるあみだくじによるCP決定戦により美奈レイバレンタイン。
久しぶりに実写で書こうと思うと意外にキャラを覚えていないという…昔とはまたキャラが変わってしまっているような、いないような。
posted by ひるめ | 02:07 | 美奈レイ | comments(0) | trackbacks(0) |
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