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なんでもないこと
ひるめです。
まこ亜美書こう!と思っていたのに気づけばレイ→亜美なことになっていました。
ホワイトデーネタで書こうとしていたのに大遅刻。です。






「この頃、変じゃない?」

唇だけを動かして、美奈子が問う。
誰が、という主語は不要だった。
同意する代わりにレイは視線を交わし、肩をすくめてみせた。
二人して見つめる先の青いペンは、先ほどから止まっては動き、また止まる、を繰り返している。
いつものさらさらという形容詞とは程遠い、鈍いペン先だった。

「何か、あったのかしらね」

レイのつぶやきに、やっぱりそうよねぇ、と美奈子。
当の本人は何を考えているのか、もしくはいないのか、とにかく目の前の問題など頭に入っていないのは明らかだった。
あの、亜美が。

「あのさ、亜美ちゃん。ここの問題なんだけど……」
「あ、えっと」

慌てたようにペン先が紙にぶつかり、歪な線を描くのが見えた。
その一瞬で、なんとなく理由に察しはついたけれど。

「私たちが首をつっこむことでもないと思うわよ」
「えー! なんか面白そうなのに」

やはりそうくるかと半ばあきれながら、はいはいと受け流す。
二人の間に何かが起こっているとして、事情を知らないレイたちが干渉するのも野暮な話。
何か言いたげに開かれた口にクッキーを適当に放り込んで、ほら次、と促す。
うげ、とつぶやいた美奈子を横目に、レイも数字と記号の波に意識を戻した。
さして難しくはない問題をこなしていくうちに、この一件はレイの中で記憶の波に溶けて消えていた。
帰り際、亜美がレイにそっと声をかけてくるまでは。
ちょうど美奈子たちが靴を履き終えて外に出て、微妙に空いた間を突く一言。
返事に窮するレイを置いて、忘れ物しちゃったから先に帰ってて、と作られた笑顔は完璧だった。
待ってるよ、と言ううさぎの背を押して、いいからと美奈子やまことも柔らかな圧力で外に押し出す。
ぴしゃりと閉められた引き戸の音がやけに冷たく感じた。

「とりあえず……あがって」

三人のざわめきが遠ざかり、完全に聞こえなくなったのを待ってそう切り出す。
靴を履くのも忘れ、地べたに下りた足が冷たそうだと思った。
大方のことには抜かりがないくせに、こういうところだけは妙に詰めが甘いのは彼女らしいと言うべきか。
それとも、それだけ心を揺らす相手だと、言うことか。
今になって自分の行いに困ったように俯く彼女の手を引いて、紅茶でいい?と聞きながら先ほどの部屋に連れ戻す。
まずは落ち着きましょうか、というレイに、こくりと頷く少女は先ほどとは別人のようだった。

「で、何? どうしたのよ」

亜美のためにとゆっくりと淹れた紅茶を彼女の前に置きながら、レイはそう切り出す。
ことり、と置かれたカップを両手で包んで、亜美の視線は何かを探すようにぐるりと一周して。
そこからはじき出されたらしい答えは、分からない、だった。
あの彼女の口から、そんな言葉が出てきたのを聞いて、レイの中の推測は確信へと姿を変える。
そう、何ら不思議なことではない。
ただ、亜美もIQ300だの天才だのと言われる前に、一人の少女だったというだけだ。

「分からないっていうのは……私に話したいことが、ってこと?」

そうなるかしらと頷いて、いやでもと悩むように眉間に皺が寄る。

「昨日くらいからずっと、引っかかってることがあって」

でも言語化できないのがもどかしくて、と彼女の心を代弁するようにカップが揺れた。

「さっきも全然、お勉強に身が入らなくて」

問題集が一冊しか終わらなかったわ、というぼやきに、十分じゃないのという指摘はそっと呑み込んで。

「ちょっとずつ思い出してみましょう?」

そうしたら原因が分かるかも、とレイが提案すると、なるほど、と亜美のつぶやき。
レイが思いつくようなことにさえ頭が回っていないところを見ると、よほど今日は不調らしい。

「ひとまず、一昨日は?」
「一昨日、は……」

お勉強は置いておいて、読書、もいつものことだからと脇に捨てて。
どこにいたのとレイが問うと、予想通りと言うべきか、まこちゃんち、と短い返答。

「じゃあ、まこちゃんは何をしてたの?」
「まこちゃん? お返し、作ってたわ」
「お返し?」

クッキーという単語に、レイにもぴんときた。
甘いチョコレートと、それに託された思いが全国で飛び交うイベントはちょうど一ヶ月ほど前のこと。

「それで、クッキーをね、作ってて」
「ああ、それで」

言われて、今日まことが持参してくれたそれを思う。

「あれ、お返しの、残りなの」

もちろんみんなに食べてもらうために多めに焼いてはいたようだけど、との言葉に納得する。
一口にクッキーといっても、それは驚く程の味がそろっていた。
プレーンはもちろん、ココアやチョコチップ、ナッツにドライフルーツの混ざったものまで。
いくらまことでも力が入りすぎなのでは、と思っていたがレイたちの他にも渡すあてがあったのなら納得がいく。
それぞれに、好き嫌いがあることを思ってのことだったのだろう。
そうした気配りが息をするようにできてしまう、それが木野まことという人だった。

「その時に、まこちゃんってとても真面目だなって思って」
「真面目、ねぇ」

自分自身に言い聞かせるように、選ばれた言葉。
それが無意識下の行動なのかと思うと、心臓ではないどこかが悲鳴を上げた。
彼女にそんなことをさせられるのは、たった一人しかいないという事実が唐突に襲ってくる。
未だ思考の海に沈む亜美に、今すぐ答えを与えるのは簡単な話だった。
けれど、それを拒む自分が顔を覗かせる。
呑気なまことの笑顔が浮かんでは消え、じわりと胸に広がる名状しがたい感情。

「こんなこと、急に言われてもレイちゃんが困るだけよね」

ごめんなさい、とその瞳はやっとレイを映した。
そのことに少しだけ満足して、けれどレイの底なし沼を満たすには足しにもならなかった。

「いいわよ、気にしないで」

――絶対に教えてなんかあげない。






どうもひるめです。
最近セラミュを初めて視聴しまして絶賛森野さんショックを受けているところです(驚)
というわけでずるずるセラムンSS書けない時期が続いてたんですが、ちょっとだけリベンジ、ということで。
posted by ひるめ | 06:49 | その他(セラムン) | comments(0) | trackbacks(0) |
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