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夏のせい
まこ+レイ。
内部で夏祭りってとっかかりだった気がするんですが2人しかでてきません…そんなお話。






温い風が髪の毛の間を通り抜けていく。
しかし、それは重たい空気をかき混ぜていくだけで、涼しさの足しになどなりはしなかった。

「大丈夫?」

言いながら、先ほど屋台で買ってきたかき氷を差し出す。
既に端の方が少し溶けかけてはいるが、それでもないよりはマシだろう――特に、今のまことにとっては。
気のない返事で彼女がそれを受け取るのを見届けて、レイも横に腰を下ろした。

「みんなは?」
「金魚すくいでもしてるんじゃない?」
「……そっか」

すっと目を細めて、氷が一口運ばれる。
まだ頭は痛むのか、受け取ったカップをそのまま額に当てる仕草はどこか滑稽で。

「さっきより、だいぶマシになった」
「それは良かったわ」

とはいえ、まだその声にはだるさが滲む。
もうちょっと休んでていいわよ、と言うように頭に手を載せると、彼女が小さく頷いたのが分かった。


最初におや、と思ったのは、たぶん彼女の爪に色が乗っていたせいだと思う。
別に普段から気にしていたわけではない、ただよく料理をするという彼女の指先にはそぐわない気がしただけだ。

「早すぎたかな」
「別に、気にしなくていいわ」

お邪魔しますと言いながら、脱いだ靴をそろえるその指先が、きらりと光を反射するのにふと目を奪われて。
けれどその時はそれ以上のことは思わなかった。
夏祭りに行きたい、と言い出したのは確かうさぎだった。
そこに美奈子が乗るのはいつものこと、二人が結託してしまえば他の意見はあってないようなもので、結局はその二人に付き合わされる羽目になる。
けれど、それも嫌いではないと思うようになったのだから、人というものは変われば変わるものだ、と思う。
イケメンと一緒がいいなんて意見は置いておいて、浴衣を着たいという要望になら協力できるわ、とのレイの申し出に、うさぎと美奈子の瞳は輝いた。
聞けばまことも亜美も浴衣は着られるというから、ならば着付けは手伝ってもらうことにして。
当日、レイの家に一番に姿を現したのはまことだった。
着替えは向こうの部屋で、と彼女を部屋に案内し、レイ自身は麦茶でも作ろうと台所に引っ込んだ。
終わったら呼んで、と声をかけて、そっとふすまを閉めて、あれからもう1時間が経とうとしている。
浴衣ならば30分もあれば終わるだろう、そう思って細かな家事をしながら待っていたのだが、いつまで経ってもお呼びはかからない。
さすがに何かあったのかと不安になって、気づけば部屋の前にいた。
終わったかどうか確認するようにふすまを軽く叩くと、どうぞ、と中から声がして。
そろりと開けたふすまの向こうは自分の部屋のはずなのに、一瞬そのことを忘れた。

「……え、と」

固まるレイに何を思ったか、似合ってないかな、と彼女は首筋に手をあてる。
黒地に深紅の花火が咲く浴衣と、それを引き締める真っ白な帯。
今の彼女なら――いつもの彼女だってもちろん華はあるのだが――きっと誰であろうと振り向いてしまう。

「……似合ってるわよ」

言葉を並べ立てて反論するのも白々しいような気がして、結局それだけをぶっきらぼうに投げつける。
たったそれだけのことに心の底から安堵したように、彼女の口からよかったと零れ落ちた。
それがあまりにも"心から"といった様子なものだから、どうしたの、と深追いしたくなるのをそっと堪えた、その代わり。

「髪は? どうするの?」

丁寧に畳まれた洋服の上に、取り残されたかんざしが目の端で控えめに主張していた。
それは、彼女の迷いの跡のようで、お節介は承知の上でそう聞いた。
聞かなければならないような、気がした。

「ん、と。どうしようかなって」

こんな時でさえ、柄じゃないよね、と彼女は誰に対してなのか分からない遠慮を口にする。
その様子に、胸の奥から何か熱いものが上ってくるのが分かった。
――どうしてそう、貴女は。

「……座って」
「え、」
「いいから」

でも、と口にする彼女を半ば強制的に鏡の前に座らせて、レイは近くにあった櫛を手に取る。
どうせなら、とことんまでやればいいのだ――持ってきたのだから、つけたいという思いはあっただろうに。

「自分じゃ、うまくできなくて」
「言ってくれればいくらでも協力するわよ」

言いながら、その栗色の髪の毛を梳いていく。
櫛を通して伝わる感触は見た目以上に柔らかく、素直なその髪質は、丁寧に毎日手入れされている証。
それなのに、柄じゃない、なんて。

「……ほら、似合うじゃない」
「ん……ありがと」

それでもまだ、言葉の端に不安が見え隠れするものだから、レイは内心首を傾げる。
似合っているかどうか、そんなことは問題ではないのだろうか。
頭のてっぺんから爪の先まで、少しの隙間もなく今の彼女は綺麗だというのに。

「なんだか……恋でも、してるみたいね?」
「えっ」

思わず口にした言葉は冗談のつもりだったのに、返ってきた反応は予想外。
まさか、と窺った鏡の向こうでぶつかった視線は、なんで、とでも言いたげだった。

「分、かるの」
「……まあ」

その様子を眺めながら、何かがすとんと腹に落ちた音がした。
半分は賭けみたいなものなのだから、そんなに素直に乗ってくれなくたっていいのに、とは言えなくて。

「……参ったな」

そんなに分かりやすいかなぁ、と頬を掻く仕草に、あぁ本当なのだと実感する。

「自信、持っていいと思うけど」

誰に、なんて野暮なことを聞くつもりはないけれど、今の彼女ならきっと無敵だ。
だから大丈夫、と言うように肩に手を置くと、掌の向こうで体の力が少しだけ弛んだ気がした。


雑踏が生み出すざわめきから、浮き上がって聞こえるじゃれ合い。
まことやレイのことを思い出したうさぎたちが、迎えに来たのだろうと察しがついた。

「大丈夫?」
「うん」

しかし、立ち上がろうとした足は地面を捉え損ない、彼女の体がぐらりと大きく傾く。
危ないと差し伸べた手の先で、仄かに朱の差す横顔がまだ休養が必要だと告げていた。

「……もう少し付き合うわ」
「ごめん」
「気にしなくていいわよ」
「ん」

半分以上は水に戻ってしまったかき氷が、彼女の手の中でちゃぷりと揺れる。

「ごめんなさいね、亜美ちゃんじゃなくて」
「……敵わないな」

それを言うなら、まことが分かりやすすぎるのだ――たった一言でのぼせてしまうなんて。
ああも呆気なく人が陥落するのを、レイは初めて見た。

「可愛いって」
「あぁ、うん」

まだ思い出すとその時の感覚が蘇るのか、堪らないといった様子で伏せられる顔。

「良かったじゃない」
「夢じゃ、ないよね」

こつん、とその頭を小突くと、ちゃんと痛いや、と言いながら彼女が顔を綻ばせた。






夏ですね。ひるめです。
昔はかっこいいまこちゃんが好きだったのですが、大人になって見ると恋する乙女な彼女も可愛いなあとか……そんなことを思いつつ。
posted by ひるめ | 11:31 | まこ亜美 | comments(0) | trackbacks(0) |
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