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短めの。
どうもひるめです。
オンリー原稿の合間にもそもそと書いてたまこレイと美奈亜美を2つほど。
どちらも1000字程度です。






『あたふた』


「レイちゃんレイちゃん大変!!」

耳元でまくしたてられて、レイは思わず受話器を遠ざけた。
その声は隣にいたまことにも届いたのか、ちらりと目が合ったその表情はやれやれ、と苦笑気味。

「……なに?」
「ちょっとぉ、なんでそんな冷静なの! 大変なんだってば!」

大変、を何度も繰り返すあたり美奈子には悪いのだが、こちらはこちらの都合がある。
もう寝ようと電気まで消したところで、叩き起こされる方の身にもなってほしい。

「切るわよ」
「あああ待って待って!! 違うの! 違わないけど! いやそうじゃなくて! とにかく聞いて!」

まことが「聞いてやりなよ」と息だけでささやく。彼女に言われなくても、おそらくこのままでは美奈子が寝かせてなどくれないということは明白だった。

「……手短に」
「えっと! だからその! 亜美ちゃんが寝てて!」
「亜美ちゃんが?」

言われてみれば、美奈子が今日は亜美の家に泊まりに行くのだとかなんとかで浮足立っていたような記憶がある。
それで勉強にも身が入るわけもなく、そうそうに勉強会は解散になったはずだ。

「……そりゃ寝てるでしょうね。こんな時間だもの」
「えー! そんな反応?! だってお風呂から出たら寝てるのよ? 亜美ちゃんが! 無防備に……!」
「だから何?」

あからさまに苛立った声音になったのが自分でもわかった。
そんなレイを、まことの掌が無言であやすように撫でる――その余裕も、なんだか悔しくて。

「こ、こ、これって、その……お誘い……ってこと?!」
「は?」
「だって二人ともお風呂あがりよ?! そんな状況で寝てるなんて……」

思わず通信を切ろうとしたレイから、するりと電話を取り上げられた。まあまあ、と宥めるような表情で。
どうしてそう、甘いのだろう。

「……とりあえず、おはようのキスでもしてみたら?」
「えっ、ちょっとまこと、何言って――」

レイならそれで起きるけど、といらない情報まで付け加えて、その口元がにやりと持ち上がる。
電話の向こうでは美奈子が何か言っている気配はあるが、聞き取れない。
そうこうしているうちにまことはさっさと会話を終わらせ、電話はまたレイのもとに戻ってきたのだった。

「どうして、あんなこと」
「んー、だって二人の問題だし?」

あたしは眠いし、と言いながら、ふつりと光が消えた、と思った刹那。

「――ッ?!」

唇に触れた感触は戯れるように一瞬だった。それなのに。

「……寝ようか」

言葉とは裏腹に、声には熱がこもる。
最初が掠れていたのはきっと、緊張しているのはレイだけではないからだと思いたい。
答えるかわり、お返しをして。
まことの体重がふわりと舞い降りるのを感じながら、レイはそっと目を閉じた。



『そんなテンポで。』


隣を歩くようになって、初めて気づくことがある。
たとえば、意外といろんなところをきょろきょろ見てることとか、意外と器用に人を避けて歩くこととか、意外と歩幅が広いこととか。

「あーみちゃん。何見てたの?」

人混みを抜けて少し落ち着いたところで、そう聞いてみる。
何かに注目していたのはわかったけど、残念ながら何を見ていたかまではわからなかったから。
そりゃ、亜美ちゃんと私は違う人間だから、いつも同じようにいくなんて思ってないけど……やっぱり気にはなるじゃない。

「え? 空が、秋だなって思って」

指さす先は、夏真っ盛りだった頃より少し薄い青があった。
雲の形も、ホイップクリームみたいな塊から、薄い綿飴みたいに変わっている。
最近寒くなったなって思ってたけど、季節もしっかりちゃっかり秋に移り変わってしまっていたらしい。
今、少しでも亜美ちゃんと同じもの、見てるのかな。

「美奈?」

私の横顔に呼びかけた、その声がびっくりするくらい柔らかくて、不意にふわりと胸のあたりが温かくなった。
どうしようもなく抱きしめたいって思ったけど、そこはOTP、じゃない、PTO?ともかく、それをわきまえて自制する。

「いきましょう」

亜美ちゃんが誘うように半歩、つられて私も歩き出す。
二人きりの時間が増える前は、背丈もそんなに変わらないし、たぶん歩く速さもそんなに変わらないんだろうって思ってたのに。

「……あ」

ほら、気づいたらもう2、3歩の距離が開いてる。
以前、そんなに急がなくたっていいのよって言ったらきょとんとされたから、たぶんあれは無自覚なんだと思う――でも。

「美奈……?」

何も言わなくたって、亜美ちゃんはちゃんと振り返ってくれる。
ほら、今だって。

「えへ、ごめん」
「……迷子になるわよ」

でも、私が追いついたのをたしかめてから歩き出してくれる。
口ではそう言いながら、その実全然怒ってるように聞こえないの。

「でも、私は迷子になんかならないわよ」
「……え?」
「だって……迷子になる前に、ちゃんと振り返ってくれるでしょ?」

耳もとでほとんど息のようにそう囁いた、それに対して答えはない。

「あーみちゃん」
「……知らない」

誤魔化すように亜美ちゃんは足を速めるけど、残念でした。
さっき開いてた距離は、誰かさんのおかげで今はゼロ、なんだから。

ちょっとだけ私より速いテンポで刻まれる足音は、一致したかと思えばずれて、ずれたかと思えば不意に合わさる。近づいたり離れたり、行ったり来たり、そんなテンポで。
二人の間のそんな些細な違いも、くすぐったくて愛おしいから。
少しでも長く、隣にいたいの。ね、亜美ちゃん。
posted by ひるめ | 17:24 | - | comments(0) | trackbacks(0) |
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